爆笑!納得の「運命」解説

「高校の音楽鑑賞の時間に、この曲がかかったとき、クラスで爆笑が起こったんです。ベートーベンの真剣さが、高校生の僕らにはかなり面白く聞こえてしまって。それからこの曲が何を言っているのか気づくまで、5年くらいかかりました。自分が音楽を勉強するようになって、実は人間や自然、宇宙の秩序を語った曲なのだと気づいたのです」

(初めの“じゃじゃじゃじゃ~ん”をピアノで弾きながら)「このモチーフは、運命がやってきて扉を3回ノックしている。自分ではそれをどうすることもできないということを、次の音を下げることで表現しているんです。♪下がるぞ~♪ですね(笑)。♪成績下がるぞ~、給料下がるぞ~♪と続く」

「それが、第2テーマになると、主人公は新たな発見をする。♪よく見てみ~ろ、上がるから下がる、上がるも下がるも同じだ、ならば下がろう楽しく下がりましょ、怖くない!♪と、音色も楽しく終わるんです。ベートーベンのそんな哲学が込められているのですね」

 そんな歌詞付き演奏で、子ども達の笑いも誘いながら楽しく解説した後、「一つ一つの音の上がり下がりに一喜一憂する時代があったということを、私達ももう一度確かめてみたいと思います」と、「運命」の演奏スタート。なるほど、そういう意味だったのかと、先ほど宮川さんの付けた歌詞を思い出しながらメロディーを追います。さっきまで大笑いしていた子ども達も一転、集中して聴き込んでいる様子。素晴らしく引き込まれるひとときです。

 続くビートルズの「ヘイ・ジュード」では、ポール・マッカートニーが、離婚問題で揉めていたジョン・レノンの息子を励ますために作ったと言われていることから父・宮川泰さんとの親子エピソードを披露。そして父の曲である「宇宙戦艦ヤマト」を演奏しました。アンコールでは『クインテット』のテーマも披露されました。

 最後に「お客様を自然の中にお戻しするため、いつもコンチェルタンテⅡで演奏している」という「風のオリヴァストロ」を演奏し、北海道を気球で旅しているかのような心地よい音世界を再現したところで、すべてのプログラムが終了。帰途につく観客達は誰もが朗らかな表情で、あちこちで「楽しかったね」「〇〇の曲が良かった~」と口々に感想を言い合う家族連れの姿が印象的でした。宮川さんのサービス精神が全開し、音楽が分かり易く、楽しく、刺激的に紹介されるこのコンサート、次回は10月13日(祝)、新潟・りゅーとぴあで開催の予定だそうです(4歳以上入場可)。

 音楽の垣根を取り払い、従来とは違った音楽の楽しみ方を観客に提供する宮川さんに、改めて「ライブで聴く」意味について聞いてみます。