作曲家の言葉をヒントに、想像の翼を広げながら音楽を楽しむ

 サマーコンサートは、子どもも含めた幅広い観客に音楽を楽しんでもらいたいという意図で、毎年、新日本フィルが企画している演奏会です。その人気コンサートが今年は宮川彬良さんとタッグを結成。音楽をより身近に楽しめるよう、幅広いナンバーをトークを織り交ぜながら演奏する人気コンサート・シリーズ「コンチェルタンテⅡ」バージョンとして上演されました。

 小学生、中学生の家族連れから新日本フィルのファンらしいご高齢の方まで、様々な客層で埋め尽くされたコンサートホールに、まずはTシャツ姿の楽団員達が登場します。普通のクラシックコンサートではないぞ、と興味がかき立てられたところで、宮川さんが登場。ゆったりとしたテンポで、「見上げてごらん夜の星を」が奏でられます。途中、映画『E.T.』のテーマや「星に願いを」のメロディーが織り交ぜられ、この1曲で喧噪の都会から心地よい異空間に誘われるよう。演奏後、宮川さんがマイクを取り、「単なる懐メロとして演奏するのではなく、小さな星、遠い星、近くの星、それら様々な星が瞬いている情景を表現したかった」とコンセプトを説明します。聴き手の中で、今聴いたばかりの曲の、変化に富むアレンジが反すうされる構成です。

 エリック・サティのピアノ曲をオーケストラで肉付けした「ジュ・トゥ・ヴー」に続いて演奏されたのは、宮川さんいわく「この曲がオーケストラで聴けるのはここだけじゃないか」という「メリー・ジェーン」(つのだ☆ひろ!)。次の「シェルブールの雨傘」は宮川さんによると“半音間違いの連続”の曲。ピアノで再現しながら、次はここに来るだろうという音から半音ずれた音が連続し、それによって結ばれない男女の切なさを強調しているのだと解説してくれます。「そういうズレが一切ないのが、この曲です」と華やかなアンデス民謡「花祭り」が続き、最後は映画『大脱走』のテーマで楽しく一幕が終了。エリック・サティにつのだ☆ひろ、映画音楽に民謡曲。宮川さんの言う通り、音楽のジャンルの垣根を壊した、あっという間の45分でした。

 2幕はお待ちかねのベートーベン交響曲第5番「運命」第1楽章より。ピアノに向かいながら、宮川さんのトークがさく裂します。