ニーチェの言葉を分かりやすく説いてベストセラーになった『超訳ニーチェの言葉』にはこのようにあります。「結婚に踏み切るかどうか迷っているなら、じっくりと自分に問いかけてみよう。自分はこの相手と、八十歳になっても九十歳になってもずっと楽しく語り合っていけるだろうか、と」

 仕事や家事などで疲れていると、夫婦の会話がおろかになるときもあると思いますが、たわいのない話題でもいいので何か話しておきたいものです。そこから起こる笑いが、子どもの笑顔につながることだってあるのですから。

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい

吉野弘

「祝婚歌」

 詩人の吉野弘が、めいが結婚するときに贈った詩「祝婚歌」の冒頭の部分です。その後、多くの人達の間で読み継がれ、現在でも結婚式の祝辞として引用されることが多い詩です。とてもすてきな詩ですので、ぜひどこかで全文を読んでみてください。

 夫婦の間で会話を交わすとき、「私のほうが正しい」「お前は間違っている」という気持ちでいることは禁物だと思います。例えば、子育てについて妻は色々な知識を得ているのに対して、夫はろくな知識を持ち合わせていないことが多いでしょう。そのとき、「だからあなたはダメなのよ」と相手を責めたところで、一時の優越感以外、得られるものはありません。逆も、もちろんしかりです。自分の“正義”を振りかざすことは、相手の“正義”を踏みにじることにつながります。たった2人の夫と妻、子どもにとってはたった2人の親なんですから、そんなことでいがみ合ったって意味がないでしょう。

 夫婦で交わす会話は、「こんな会話、よその人に見られたら恥ずかしいな」なんてレベルのものでいいんじゃないでしょうか。正し過ぎず、立派過ぎない。夫婦も子育ても、肩肘張らず、のほほんといきたいものです。

(文/大山くまお)