この経験から、「10日以下」という条件を、1日の所定労働時間を8時間として「80時間以下」にできないかと考えた私は、国の各省をまわり、その必要性をテレワークや育児休業担当の方に訴え続けた。

 「休業中に働くのはおかしい」「そんなに働きたい女性がいるのか」「悪用されたら雇用保険の財源がなくなる」といった厳しい意見もある中、何人かの方が真剣に検討し、国会議員へも持っていってくれた。しかし、経済不況や政権交代等の中、一歩進んで一歩下がる。また、一歩進んで一歩下がる。その繰り返しの挙句、9年という月日が流れ、ようやくテレワークを推進する安倍政権のもとで実現したのが、この改正なのだ。

「休む」か「働く」ではない、新しい選択肢

 私が3人の娘を出産した頃は、フリーのライターをしていた。自営業なので、自分の判断で仕事の時間や量を調整することができた。実際、出産前も出産後も、在宅で仕事をしていた。おかげで、出産後もキャリアを継続することができたのだ。

 しかし、雇用されている人は違う。「育児・介護休業法」という法律で守られてはいるものの、「休む」か「働く」か、どちらかを選択しなくてはいけない場面が多くあるだろう。

 もちろん、育児休業を取得する女性すべてが「在宅勤務」をしたいというわけではない。しかし、「休む」か「働く」か以外に、「休みつつも、仕事を中断しない」という選択肢があれば、どちらも選べずにいた女性たちが行動できるようになる。「子どもは欲しいけれど、キャリアを積んでから」「今、子どもを産むと、会社に居にくくなる」といった理由で、出産を遅らせた人を何人も知っている。また「働きながら、2人目は無理」と、1人であきらめた友人もいる。

 さらに、今回の改正は、男性の育児休暇取得の増加にも貢献すると私は考えている。「子育てに参加したいが、仕事を完全に休むのは難しい」という男性は多いはずだ。

 本当の意味で「女性が能力を発揮して活躍できる社会」に必要な施策は、「女性を守る」だけでなく「女性を企業にとっての戦力とする」施策だ。その一つの方法が、柔軟な働き方である「テレワーク」だと私は考えている。

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『在宅勤務が会社を救う: 社員が元気に働く企業の新戦略』
田澤由利著/東洋経済新報社

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