簡単にその意味を説明しよう。

 育児休業を取得し、1年間完全に仕事から離れて子育てに集中するのもいいだろう。しかし、1年という月日は長く、職場に浦島太郎で戻ることに不安を持つ人も少なくない。

 インターネットやパソコンの普及で、環境さえあれば仕事はどこででもできる時代だ。育児休業中でも、赤ちゃんが寝ている短い時間であれば、パソコンを使って仕事ができる。育児休業中に在宅勤務で仕事をすることができれば、量や内容が限られたとしても、関わってきた仕事の進捗や仲間の様子を見ながら、自分も業務に参加することもできる。スムーズな職場復帰はもちろん、育児中の不安を取り除くことができるだろう。そして当然、(働いた分の)お給料ももらえる。

 しかし、インターネットもパソコンもない時代からの、育児給付金の支給規定では、そんな働き方は想定されていなかった。育児休業中の就業は「月10日以下」という基準を満たさないと、育児給付金が支給されない。しかも、育児休業中に家で仕事をした場合、たとえ1時間でも1日と判断された(判例より)。

 つまり極端な例では、「1日1時間で11日間」仕事をすると、育児休業給付金が支給されない。それでは本人にとっても、会社にとっても、「育児休業中に在宅勤務で働く」のは現実的ではなかったのだ。

 これが、今回の育児給付金の支給規定改正で、「10日を超える就業をした場合でも、就業していると認められる時間が80時間以下のときは、育児休業給付を支給される」ことになった。つまり、月80時間以内であれば、育児休業中に毎日、在宅勤務をしても、育児給付金が支給される。給付金の上限(80%)があるため、80時間フルに仕事をすると給付金が減額されてしまうが、時間単位になったことで、毎日仕事ができるようになる意味は大きい。

休業開始時賃金月額が30万円の場合の例
休業開始時賃金月額が30万円の場合の例

 育児給付金の上限(80%)はあるものの、赤ちゃんが生まれてさらに支出が増える時期に収入をできる限り確保し、スムーズな職場復帰はもちろん、復帰後の(子育て中の)柔軟な働き方の予行演習にもなるだろう。企業にとっても、社員が1年間、完全に休むよりも、毎日在宅で働いてくれると大いに助かる。「この業務は、どうするのだっけ?」と、休業中に申し訳なさそうに聞く必要もない。復帰後も早期に戦力として働いてくれるだろう。