――川上さんは、女性ファッション誌の作られたイメージを見ても鼻で笑ってそうなのに(笑)。ちょっと意外です。

 基本的には、それこそ、そういうイメージがフィクションだって分かってるんだけれど、実際に経験したらそんなふうに思っちゃったの! とにかく産後は不安定で、被害妄想に陥りがちで、普段なら何でもないことで傷ついたりするんですよね。あと、ナルシシズムの一種なんだろうけれど、出産後も産む前と同じスピードと量で仕事ができて、家のこともできていなければいけない気がしたんです。特に産後は“働きホルモン”という、自分の能力の何倍も何倍もやってしまう成分が出ちゃうらしいんですよ。

“働きホルモン”に翻弄されて

 その“働きホルモン”の影響なのか、産後もごはんのおかずを4品も5品も作っていました。数時間おきに授乳する生活で、寝てなくて本当に辛いのに。あべちゃんも「作らなくていいよ。買ってくるからちょっと横になってなよ」って言っているにもかかわらず、「いや、私がおいしいもの食べたいんだよね、作る作る!」とかハイテンションで言いながら、涙が出てきちゃうの。部屋も隅々まで掃除しちゃって。

 すべて完璧にできないと、働きながら子どもを育てていく資格がないように思ってしまっていて。資格なんてないんですよ、今なら分かる。でも自分で思い込んで、ものすごくきつかった。特に産後半年〜1年は、思いもよらないがんばりと虚脱が、ものすごく速いサイクルで繰り返されるようでした。

 「産後はこういうことがあるからがんばりすぎないでね」と何十回も聞かされていたんですよ。でも渦中にいると何を言われても分からないの。2年経った今は分かる、産後にそういう中でがんじがらめになっているお母さんに、「授乳以外は、もう何もしなくていいよ……」って本当に伝えたい(笑)。

――仕事は、産休・育休という形を取らなかったわけですか?

 産むギリギリまで何か書いていたし、産んでからもそうでした。どーんと構えられる人は「2年ぐらい休んだって別に」と余裕でいられるんだろうけれど、私にはできなくて。作家という仕事は自由がきく部分も大きいですが、産休・育休制度が何かの形で保障されているわけじゃないですし。実際問題、書くのをちょっとでも止めると勘が鈍ったりしちゃうんです。産後は日に日にものをきちんと考えられなくなっているような気もして、それも怖かった。

 一方で、赤ちゃんはものすごくかわいいから、「こんなにも最高のものと出会えたのに、どうして仕事なんてしているんだろう」と思うときもありました。ベビーシッターさんに預けて小説を書いていると、自分がものすごく取るに足らないことをしている気にもなって。