仕事を優先し、結婚・出産を後回しにする女性の増加に伴い、不妊のリスクも増しています。「共働き夫婦で、第1子はできたけれど、第2子がなかなかできない」という“隠れ不妊”に悩んでいる人もいます。妊娠に関する正しい知識を、アラフォーで2児の子育て真っ最中、アメリカ・ボストン在住の産婦人科医、樽井智子(たるい・ともこ)さんが、連載「USA発 ともこ先生の DUALな妊活A to Z」で教えます。

「精子が作られ、運ばれ、射精する」プロセスに問題があると、男性不妊になる

 前回は、都議会ヤジの話から「日本の男性は不妊の原因は自分にないと思っている?」といったお話をしました。 今回は男性不妊の続編として、男性が自分でできる妊活、そして男性の加齢が生まれてくる子どもに与える影響などについてお話ししたいと思います。

 まず、 男性不妊について簡単におさらいしましょう。

 不妊の半分は、男性側にも問題があることが分かっています。男性側の因子としては、精液中に精子がない「無精子症」、精子が少ない「乏精子症」、動いている精子が少ない「精子無力症」、勃起不全による「性交障害」、膣内でうまく射精ができない「射精障害」などがあります。

 男性不妊の検査で最初に行うことは精液検査です。精液を容器に取っていただき、精液量、精子濃度(1ml中の精子数)、精子運動率(運動している精子の割合)などを測定します。その結果のことを精液所見といいます。

 2010年のWHOによる基準値は、精液量1.5ml以上、精子濃度が1500万/ml以上、精子運動率が40%以上、形態が正常な精子が4%以上です。精子濃度が1500万/ml以下を「乏精子症」、精液中に精子が存在しない場合を「無精子症」、運動精子が40%未満を「精子無力症」といいます。

 男性不妊症は病因別に、精子を作る過程に問題がある「造精機能障害」(90%)、精子が作られてから出てくるまでに問題がある「精路通過障害」(5%)、 交渉が持てない「性機能障害」(3%)、その他(2%)に分けられます。

 精子は、精巣中の「精細管」という部分で74日間をかけて作られ、その後「精巣上体」「精管」へ運ばれます。精管の終点で「精嚢」と合流し、精嚢の分泌液と混じり合って「前立腺」に送られ、精液となります。精子が作られ、運ばれ、射精するまでの過程のどこかに問題があると、男性不妊になるわけです。

 妊活中の男性は、まずは精液検査を受ける必要があります。精子は毎日作られており、そのときの健康状態にも大きく左右されます。そのため、精液検査は時間をおいて数回行うことが一般的です。