2時間くらい経ったでしょうか。娘の表情がだいぶ普段に近づいてきたのを確認すると、僕は楽天で検索して当日空きのあったホテルを一部屋とり、娘を送り届けました。ホテルマンに「じゃ、しっかり頼んだからな!」と言って帰ろうとする僕の背中に向かって、娘は「パパ! 帰っちゃうの?」。「あったりめぇだろ。今度はママをフォローしなきゃ」。時計はもう深夜0時を回っていました。

家族の一大事に「すぐ家に帰る」選択ができるか

 家に帰ると、寝ずに待っていた妻と対面。今度は、妻の話を聞くに徹します。
僕は妻の気持ちに寄り添いながら、「あいつも困ったところがあるけれど、僕たちの子どもなんだからもう少し信頼しようよ」となだめました。妻も娘が心配で疲れていたのでしょう。3時間ほどすると、眠りに就きました。僕がシャワーを浴びたのはもう夜も明けた5時くらい。それから、仕事に間に合わせるために始発の新幹線でまた岡山に向かったのです。
 長い夜でした。この話をすると、「よくやりましたね」と褒めてもらうことが多いのですが、どう考えても「帰る」以外の選択肢はありませんでした。もしも僕が妻からの電話を取ったときに「出張中だから無理」と逃げていたら、僕達家族はどうなっていたのか。この時、上の息子はまだ小学生でしたが、お姉ちゃんの反抗とそれに父親と母親がどう対処したかという姿も見て、何かを感じ取っていたはずです。

部下の危機に対する上司の対応力は組織の強さにつながる

 部下が一人で解決できない問題に直面したときに、上司が真剣に解決しようと行動するかどうか。部下も、周りも、シビアな目で見ています。そういったピンチにこそ、「この人は信頼できる」という行動を示せるかどうかは、その後の関係性やチーム全体のモチベーションに大きく関わってきます。

 さて、妻と娘のその後が気になりますか? 僕が岡山出張から戻るころには、妻と娘は普段通り、一緒に買い物に行っていましたよ。親子って不思議なもんですね。

 では、また会いましょう!

(ライター/宮本恵理子)