フリーWi-Fiが整備されれば就労支援に

―― シングルマザーの就労収入を上げるのは難しいでしょうか。

安藤 そのためには、まず最低賃金を上げてほしいですね。この地域では時給700~800円。フルタイムで1カ月働いても月収は12万円程度。生活は何とかできますが、子どもの塾代や学費などを捻出するのは難しいです。

 一方、仮に正社員として採用されると、サービス残業が長く、育児と両立するのが難しい。労働市場は厳しくて、保育士、介護士など福祉の仕事は若い人との入れ替わりも早く、年配からクビになっていくんです。

肥田 求人が多いのは営業職です。例えば生命保険など。ただ、女性は「自分は営業なんてできない」と思う人が多く、応募しない傾向があります。

 営業支援も求人がありますが、パソコンのスキルが必要です。私自身がパソコン講師をしているのでよく状況が分かるのですが、地方ではITスキルが低い人も少なくありません。例えばこの都市のブロードバンド普及率は7割。シングルマザーだと3割程度。ITを使って情報収集できない人が大半です。

 政府は就業支援のためにパソコン講座を提供しますが、自宅で使える環境にないのが問題です。例えば地方を含めた日本全国でフリーWi-Fiの環境を整備してくれたら、全体の底上げになると思いますし、就労支援にもつながるのではないでしょうか

生活保護の対象にならない層にも関心を持ってもらいたい

―― パソコン教室まで開いているなら、就労支援として、もう一歩踏み込んだことをしてもいいですね。

肥田 企業や大学で新品を買う際、廃棄する古いパソコンがたくさんありますよね。こういうものを低額や無償でシングルマザーなどに配布していただけたらなあ、と思うんですよね。悪用や転売の危険性を考えるなら、貸与でもかまいません。

安藤 生活保護など福祉の対象にならない層に対する社会的支援について、多くの方に関心を持っていただけたらと思います。児童扶養手当も医療費免除もない。私自身は病院に行くのを我慢して、症状が悪化したこともある。