ひとり親であることを言い出しにくい雰囲気

―― カフェにはどんな方が参加していますか。

肥田 自立して働いている方が大半です。正社員事務職、専門職非常勤など。生活保護を受けていない方が多いのですが、生活は総じて厳しいです。実はこの市内では事務職の月収は13万円程度(税込み)で、生活保護のほうが高いくらいです。

安藤 皆さん前向きで、資格を取ろうとか頑張っていますね。「ここに来て初めて自分と同じ立場の人に会った」という方もいます。シングルマザーであることを周囲の人に言えずにいて「周囲に、自分のようなシングルマザーがいない」と思い込んでいることもあるようです。

―― 東京などの都市部とは、だいぶ雰囲気が違いますね。

肥田 驚かれると思いますが、女性は結婚しているのが当たり前という考えが地方ではまだ根強い。離婚でも死別でも、夫がいない女性に対して「まだ再婚しないの?」と平気で尋ねます。

安藤 そういう環境なので、シングルマザー自身が「地味に目立たなく、楽しいことなんかないように生きなくてはいけない」と思っています。例えばシングルマザー家庭の子どもは、地域の少年野球団などスポーツチームに入れないと誤解している人もいるほどです。本当はそんなことはないのですが……。

夜間や病気時に子どもを見てもらえたら…

―― 行政からのひとり親支援はないのでしょうか。

安藤 先ほど、塾の例でもお話ししたように、生活保護世帯には医療費補助など色々な福祉サービスがありますが、生活保護対象外の世帯には、ほぼ何もないと言っていいと思います。

 例えば夜間に子どもを見てもらいたい場合。児童相談所からトワイライトステイなどの案内は来ますが、敷居が高くて私は使えません。「児相」というのがひっかかるんです。「シングルマザーだから虐待しているのでは?」と思われそうで。

肥田 安心して使えてあまり高くない病児保育があったら……という声は、私達が毎月開催しているカフェでも、よく出てきます。

 ただ、そもそも保育園に入るのも難しい。地方都市でも待機児童は多く、0・1・2歳は保育園に入れない。そのため、離別や死別で夫がいなくなった最初の年は、本当に大変です。

 仮に保育園に入れても、前年の世帯年収で保育料が決まるため、今は同居しておらず経済的援助もしない夫の収入から算出された、高い保育料が適用されてしまう。ちなみに無認可保育園だとシングルマザー割引を適用しても月額2万5000円程度です。

 大抵の場合、シングルマザーは離婚したばかりのころは児童扶養手当もなく、保育園には入れず、環境の変化に適応できずにいる。この時期に激変緩和措置のようなサポートがあると母親だけでなく子どものためにもいいのですが……。