「大人はどうして働くの?」と子どもに聞かれたら、なんと答えますか。多くの人が「食べていくためだよ」と答えるでしょう。では宝くじに当たったらもう働かないのでしょうか。いいえ、それでも働くはずです。なぜでしょう。
 子どもが発する素朴な疑問は、大人にも大切なことに気付くチャンスを与えます。「なぜ働くのか」という問いは、働くパパとママに対して、自分と家族を見つめ直す貴重な機会を与えてくれるでしょう。
 天皇陛下の手術も執刀した心臓外科医・天野篤さん、テレビで人気のジャーナリスト・池上彰さん、『舟を編む』『まほろ駅前多田便利軒』などが人気の作家・三浦しをんさんら7人が、働く意味について語ります。書籍『大人はどうして働くの?』の子ども向けにやさしく語った「子ども編」。その一部を、日経DUAL読者に向けてご紹介するシリーズです。
 第一回「天野篤さん」に続く第二回目は、ジャーナリストの池上彰さんからの、子どもたちに向けての珠玉のメッセージです。

「○○になりたい」の奥に、“本当の夢”が隠れている

ジャーナリスト・池上彰さん
ジャーナリスト・池上彰さん

 ボクは小学校6年生のときに、本で読んだ新聞記者にあこがれて「新聞記者になるぞ」って思ったんだ。東京から離れた地方で起きるいろんな事件を取材して、警察に話を聞き出して特ダネを記事にしたり、犯人を見つけ出して事件を解決したりするのが、すごくカッコよく見えた。天気を予測する気象予報士に憧れた時期もあったけど、苦手科目をどうしても克服できなくて、新聞記者をやっぱり目指すことにした。
 でも、大学生のときに「あさま山荘事件」という大事件が起きた。連合赤軍というグループが、人質を取って10日間も山荘に立て籠もった事件だ。まだテレビのニュース番組はほとんどやっていない時代だったんだけど、事件の様子は毎日生放送でニュースが流れて、日本中がテレビにくぎ付けになった。映像のパワーはすごかった。それで「これからはテレビの時代かもしれないな」ってなんとなく思ったんだ。