「大人はどうして働くの?」と子どもに聞かれたら、なんと答えますか。多くの人が「食べていくためだよ」と答えるでしょう。では宝くじに当たったらもう働かないのでしょうか。いいえ、それでも働くはずです。なぜでしょう。
 子どもが発する素朴な疑問は、大人にも大切なことに気付くチャンスを与えます。「なぜ働くのか」という問いは、働くパパとママに対して、自分と家族を見つめ直す貴重な機会を与えてくれるでしょう。
 天皇陛下の手術も執刀した心臓外科医・天野篤さん、テレビで人気のジャーナリスト・池上彰さん、『舟を編む』『まほろ駅前多田便利軒』などが人気の作家・三浦しをんさんら7人が、働く意味について語ります。書籍『大人はどうして働くの?』の子ども向けにやさしく語った「子ども編」。その一部を、日経DUAL読者に向けてご紹介するシリーズです。
 第一回は心臓外科医の天野篤さんからの、子どもたちに向けての珠玉のメッセージです。

働くことは、みんなへの恩返し

心臓外科医・天野篤さん
心臓外科医・天野篤さん

 大人になったら、どうして働くのだろうか。働く理由はなんだろうか。それは「恩返し」だ。
 キミは、これから成長していくうちに、将来進みたい道がだんだんとはっきりとしてきて(もう心に決めている人もいるかもしれないけれど)、それを目指すために努力をすると思う。努力をした結果、思い描いた通りの仕事に就けるかもしれない。思い描いた通りにはならなくても、何かの仕事に就くかもしれない。
 そのときに、よくわかっておかないといけないことがある。「その結果はキミ一人の努力で成し遂げたことではない」ということだ。