保護者と地域が協力して「おやつ調達」

 学童の場合、調理設備がないことも多いが、保護者参加でのこんな工夫も見られる。

 「私達の学童は2週間に1度、役員以外の保護者からなる『おやつ当番』が集い、メニューを決めて近所の商店やスーパーにおやつを発注しています。1人1日当たり80円見当で、たとえばおにぎりや焼き鳥、焼きそばなども、それぞれのお店に相談して価格に見合った量で作ってもらっています。スーパーにお願いして、この時期はカットフルーツなども入れてもらったりします。保育園と違い、『補食』というほどの量はまかなえませんが、子どもはいろいろなおやつが食べられることを素直に喜んでいます」(アンケートより)

 地域と保護者が協力し、工夫して子育てをしている様子が伝わってくる。こういうやり方もある、と分かると、明るい気持ちになる。そして、学童のおやつ問題について、簡潔に的確に言い表しているのは、このご意見だろう。

 「衣食足りて礼節を知るというように、学童が第二の家になる、共働き・シングル家庭のお子さんには常識的な時間に提供される学童のおやつが必須だと考えます」(アンケートより)

おやつに「もっと払ってもいい」と考える正社員の保護者

 地域によっては「保護者VS行政」の構図になってしまっている「学童おやつ問題」。解決策はないのだろうか。ひとつの方向性を示してくれるのが、このような意見だ。

 「もっと自己負担が増えてもよいので、質の良い、美味しいおやつを出してほしい

 アンケート結果を見ると、現状のおやつ代は月額1001~2000円が最も多く45%。1000円以下も19.2%ある。その一方で「学童のおやつに払ってもいい」と考える金額は1001円~2000円が38.8%、2001~3000円が29.4%。現状より多い金額を払っても良いと考えていることが見て取れる 。

(日経DUAL調べ)
(日経DUAL調べ)

 ここでアンケート回答者の属性をもう一度振り返ってみたい。そう。回答者の大半は正社員の母親だった。

 ひとつの仮説が成り立ちそうだ。つまり正社員の母親は、今より月額1000円くらい多く払っても良いから「ちゃんとしたおやつ」を出してほしい、と考えているのではないか。「ちゃんとした」というのは、「お菓子」ではなく「食事を補うもの」。ようするに、おにぎりなどの軽食だ。

 多くの場合、都市部では学校の校舎や敷地、児童館を利用した公立学童と、英語教育や習い事への送迎をアピールした高級民間学童が並立する。その間に、中間層向けの「まともなおやつ」を確実に出してくれる「放課後の居場所」というニーズがありそうだ。このニーズを「次世代への投資」と考えれば行政サービスになり「無駄」と考えれば切り捨てることになる。そして企業が採算性を見出せば「商機」にもなる。

 ……といった具合に、解決策について「ビジネス視点で」理屈をこねそうになって、やっぱり違うと思い直した。こういう発想は正しくない。少なくとも未成年に適用するのは間違っている。仮に放課後の居場所について「多様な選択肢」が存在しても、どれを選ぶか決めるのは、子どもの意思ではなく、親の経済力になる。

 あらためて、今日、17時40分に帰宅するやいなや、もうすぐ3歳の娘が「お腹減った!」と、朝ご飯の残りのふかしたさつまいもを食べ豆乳を飲んでいたことを思い出す。いつもより早く18時半から夕食にしたら、息子がカレースープを3杯もお代わりしたこと。2人とも、保育園でしっかりおやつも食べていたこと。

 しつこいようだが、もう一度言った方がいいだろう。学童におやつはいらない、というのは、自らの手で子どもをさわったことのない、机上の空論に基づいた「育児支援政策」にほかならない。

(画像はイメージです)
(画像はイメージです)

(次回へ続く)