ロビン・ウィリアムズが死んだ、と聞いて書きかけの原稿を思い出した。彼のヒット作、『ミセス・ダウト』。恋人時代に、夫と2人で見てひたすら笑った。その楽しい記憶を呼び起こそうと、1年前に家族で見直した。そして、私1人、笑えなかった。

 「離婚された夫が、子ども会いたさに、家政婦に変装してやってくる」――この無茶な設定を楽しみながらも、あちこちのセリフやシーンで胸が痛んだ。それは、この映画が「ハードに働く母の憂鬱」に満ちていたからだ。その痛みを原稿にしかけて、放っていた。

 死は、その人の存在を強烈に思い出させる。この原稿を仕上げることで、大好きだった映画俳優の1人を送りたい。

「子どもの笑顔争奪戦」に負けっぱなしの切なさ


ロビン・ウィリアムズのアドリブが炸裂する「妻にイタ電をかけまくるシーン」が我が夫のお気に入り。「グッド・モーニング!ベトナム」「いまを生きる」も夫婦の思い出映画だ。

 「ミセス・ダウト」の冒頭で、主人公と妻の職業が明かされる。アニメの声優であるダニエルは、こだわりが強く融通が利かない。そして、しばしば職を失う。妻のミランダは、高層ビルで働くインテリア・デザイナー。ボブの髪を揺らしパンツスーツで指示を出す、サリー・フィールドがぴたりとハマっている。

 ダニエルが、学校に子どもを迎えにいく。しっかりものの長女、サッカー少年の長男、愛くるしい次女。中学生、小学校高学年、幼稚園児ぐらいだろうか。「さぁ、帰ったら誕生パーティーだよ」と言う父親に、息子は悲しげに返す。「成績が悪かったからパーティーは無しだってママが言ってた」。ニヤッとして父はささやく。「ママはまだ、4時間は戻らない」。子ども達に笑顔が広がる。

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