小学3年生で注力すべきは、基礎的な計算練習と漢字の学習
西村 今、「場合の数」の問題を解けるか、解けないかは、あまり関係ないと思います。小学校3年生に必要なのは「読み、書き、そろばん」。つまり、読むこと、書くこと、そして、計算の基礎がしっかりできているかということです。
ところが塾に行った場合、勉強そのものが進んでいないので、場合の数や規則性、図形を折ったり畳んだり回転させたり……算数ではこの3つくらいしか教えるバリエーションがありません。だから、今できる、できないというのは、本当はあまり気にしなくていいのです。
にもかかわらず塾では、テストで順位まで出てしまう。ここが悩ましいところです。
仮に点数が取れなかったとして、点数が取れなかったことそのものではなく、場合の数の問題で答えを全く書けていないのはなぜか? その原因を探ることが大切です。
場合の数というのは、しらみつぶしに調べる方法と、樹形図を用いて答えを求める方法があります。どちらも正確に丁寧に作業をする必要があります。お子さんが丁寧に解いているのか、直感的に雑に作業しているのかは、見ておく必要があります。もし問題があれば直しておきましょう。
3年生のSAPIXのテストで点数を上げることにこだわりだすと、4年生以降、伸びない子を作ってしまう危険性があります。4年生以降、伸びる子を作りたいのであれば、例えば計算だけは1年先までやらせておく、日本語の語彙を少しでも増やしておく……。そういったことに力を入れるほうがいいのではと考えます。
小川 小学3年生までの勉強と4年生の勉強は、一直線上にはないんです。SAPIXの授業でも、講座設計が全く違います。
西村 そうなんです。そして、ほとんどの大手進学塾は4年生からカリキュラムが始まります。ではなぜ3年生のクラスを設けているのか? これは簡単に言うと、生徒の抱え込みのためです。今3年生なら、基礎学力のほうをしっかり鍛えてほしい。
小川 小学校2、3年生の算数の問題には高学年とは違った意味の難しさがあります。その問題によって何を問おうとしているのかよく分からないものも多い。そんな問題に悩んでいる時間があったら、計算練習や漢字をたくさん覚えるのに時間を使ったほうが、4年生以降の勉強につながります。
Gさん そろばんやドリルをやらせたほうがいいということでしょうか?
小川 遊ぶことも大切ですよ。公園、博物館、遊園地。何でも勉強です。遊んで楽しいことしか、子どもは覚えてくれません。
西村 ただし、遊びを通した体験でも、言葉とセットで与えることがポイントになります。
例えば上野公園に行くとします。西郷隆盛の銅像がある。そこでお母さんが「銅でできているのに、なんでこんな色をしているのかしらね?」「10円玉の色と、西郷さんの緑色とどうして違うんだろう?」と言う。その言葉が子どもの好奇心を駆り立てます。ただ銅像を見せるだけでは、効果が半減してしまいます。
それから小学3年生のお子さんに必要なもっと基本的なことは、人の話をちゃんと聞くことです。これが最も重要です。よそ見をしている子に「ちゃんと聞きなさい」と言うと「聞いてる」と言うことが多い。「聞こえている」でなく、話す人のほうを見て、「しっかり聞く」ということを理解できていない子が多いのです。
受験勉強が始まると、こうした意外なことが、大きな差につながってくるのです。