少子化や不妊は女性の問題? いいえ、原因の約半数は、男性因子です

 話が妊活から少し逸れてしまいました。今度は都議会ヤジを、不妊を専門とする産婦人科医としての視点から話したいと思います。

 「不妊の原因は女性だけでなく、男性にもあります」という塩村議員の発言に対して「やる気があればできる」といったヤジが飛んだわけですが、そこに、一般の日本人男性にありがちな、不妊に関する驚くべき無知が現れていると私は感じます。少なくとも、このヤジを飛ばした議員は、「子どもは頑張ればできる」「子どもができない原因はすべて女性にある」と思っていたのではないでしょうか?

 最近は、テレビや新聞、雑誌などでも、妊活やベビ待ち、といった言葉を耳にすることが多くなり、不妊についての情報も増え、人々の意識に変化が出てきていると実感しています。ですが、その一方で、この問題に感心を寄せているのは、主に女性。男性は、不妊の原因が自分にあるかもしれない、という意識はあまりないのではないでしょうか? 

 日本人男性の多くは、不妊の原因は、女性にあり、特に女性の年齢が上がることにあると思っているのではないでしょうか?

 「不妊治療を受けても40歳以降の妊娠出産は難しい」でも書いた通り、不妊の原因が「男性のみにある場合」と「男性と女性の両方にある場合」を合わせると、約48%を占めます。つまり不妊は、約半分の割合で男性が関係しているのです。ですから、子どもが欲しいけれどできない場合は、女性だけでなくカップルで受診して検査を受ける必要があるのです。