六本木のビルの中にある保育園。どんなに目新しい取り組みをしているのか行ってみると、そこは木の香りに包まれ、大きな行事も一切しないふんわりと穏やかな園だった。脱サラした若い創業者が目指す園とは、どんな園なのか訪ねてみた。

 広告会社、ベンチャー企業を経た男性が始めた独創的な保育園があると聞き、早速伺ったのが「まちの保育園」。2011年4月に東京・小竹向原に最初の園をオープンし、2012年12月に認可園である六本木園が開園した。

 今回伺ったのは六本木園。地下鉄・六本木一丁目の駅から徒歩3分程度でアークヒルズ仙石山森タワーのビルの中にあると聞き、どんな近代的な園なのかと行ってみると、意外にも室内は木やレンガなど自然の素材をふんだんに使い、入ると木の香りがした。園のあるエリアは高層ビルが立ち並ぶが、その間に木々や芝生のエリアが点々とあり、子どもたちが散歩をしたり鳥の声を聞いたりできる環境だ。園は今年4月に同じビル内の別のフロアに分園もでき、本園と分園合わせて0~5歳まで約70人が通っている。子ども一人一人のカバンや着替えを置く棚や、飾り棚もすべて木製。職人に作ってもらったものもあれば、職員で手作りしたものもあり、木のあたたかなぬくもりを感じる。

左側の飾り棚は、職員の手作り。右側の木の棚は、子どもたちの荷物入れで、廊下側と教室側の両方から開けて取り出せるようになっている
左側の飾り棚は、職員の手作り。右側の木の棚は、子どもたちの荷物入れで、廊下側と教室側の両方から開けて取り出せるようになっている

 六本木という場所柄、日本以外のバックグラウンドを持つ子どもも多いからこそ、和の雰囲気を大事にした園のつくりにしたという。

部屋やトイレの入り口などにあるサインは、小さな子でも分かるように文字を使っていない。子どもたちの目線で、ココがどういう場所なのか理解できるように考えられている
部屋やトイレの入り口などにあるサインは、小さな子でも分かるように文字を使っていない。子どもたちの目線で、ココがどういう場所なのか理解できるように考えられている

 創設者で代表取締役の松本理寿輝さんが、保育に興味を持ったのは経営学を学んでいた大学生のころ。講義の補習で訪れた児童養護施設で子どもたちと触れ合い、子どもの可能性や保育のあり方について真剣に考えるようになった。「保育業界以外を見て、社会経験を持ったほうがいい」というアドバイスに従い、広告会社やベンチャー企業などを経験し、2011年ついに保育園経営に乗り出した。共同経営者には、『五体不満足』の著者、乙武洋匡さんも名を連ねている。