育児や家事の時短方法を考えたりして、パニックになりそうだった時期も

 でもやっぱり最初は迷いました。子どもが学校から帰ってきた時に自分がいないことってそれまでなかったし、毎日のお弁当どうやって作ろうとか、息子の塾のテキストを全部並べて、月曜日は赤、火曜日は黄色の袋に入れて宿題をちゃんと管理する工夫を考えたりとか、家事を時短できる方法を試してみたりとか。

 10年間のブランクがあるだけに最初はパニックになりそうでしたが、息子が中学1年、娘が5年生という手がかからない年齢になっていたことも、決断を後押ししてくれた気がします。

 ダンナさんは、「よくここまで仕事せずに我慢していたな」って思っていたみたい(笑)。結婚後、彼は周りに、「なんで仕事させてあげないの?」と言われていたようなんです。私が家庭に入ったのを「オレのせいみたいに言われてる(笑)」ってよく言ってました。

 でも、彼の潔白のために言うと、それまでは私の中に仕事をしたいという気持ちが本当になかった。私は妻として、母として、自分で家族の生活をきちんと支えてあげることが前提で、それができないなら仕事はしないと思っていましたから。

 なのに、働くダンナさんと家にいる普通のお母さんという関係だった私が、突然、仕事を始めたいと言い出したわけです。

「君は大丈夫なの?」

 音楽活動を再開したいと伝えた時、ダンナさんからそう言われました。私が、家のことを誰かにまかせて外に出られるタイプじゃないのを知っているから。仕事しなくちゃ、でも家のこともしなくちゃ、あっちもこっちもどうしよう! ってなって、辛さやイライラが倍増するならやめれば? でも、楽しいならやれば? そう言ってくれました。

 そんなスタンスでいてくれる彼には本当に感謝しています。「やりたくなったらやればいい」という中で音楽みたいな芸事をできることは何よりの幸せです。