「僕は頑張ればできる子だ」と信じさせる

西村 反抗期であるとのことですが、Eさんのお子さんは自己肯定感の強いお子さんなのではないでしょうか。自己肯定感の強さは、上位校に入るための必要条件なんです。その自己肯定感が6年生まで維持できるかどうかが大きなポイントになってきそうだと思います。

 つまり「頑張ればできる子」という気持ちをずっと持ち続けさせることができるか。そうなると家庭教師の役割は「君はできる子だから、頑張れよ」と言い続けることでしょう。

 自己肯定感について言いますと、子どもは小学校3年生くらいまでは全知全能感に包まれているものです。例えば「将来はウルトラマンになる」と大声で言い切ったりもします。

 ところが「9歳の壁」というのがある。自分よりできる子がいると分かってくる。そうなると、どんどん自信が持てなくなってくる。「僕はダメな子だ」、極端な例だと「僕は拾われてきた子かもしれない」と考えたりもするんです。

 Eさんのお子さんは、その壁をうまくクリアしているのです。

 もし自分のお子さんがちょっと自信をなくしていると感じたら「あなたはできる子だから」と常に言ってあげてほしい。それだけで子どもの気持ちは変わります。

 お母さん、お父さんが子どもに語りかけるときの枕詞が大切なんですね。まず子どもをけなしてから、「だからこうしなさい」と訴えかける方法は全部失敗します。欠点を言われるのは誰でも嫌です。嫌な気持ちにしておいてからやらせようという対立的な方法はマイナスにしか働きません。

 そうではなく「あなたはできる子なんだから、こうするとこんなにいいことがあるよ」と、まずいい気持ちにさせ、「もう少し頑張れば成功できるかもしれない」という気持ちにさせてあげてほしい。

 ただし、自己肯定感が強い子は「だから、もう何もやらなくても大丈夫」とならないよう、注意することも大切です。だから「頑張れる子だから」という言葉を時々付け加えましょう。枕詞に、こうあってほしいわが子のイメージを重ねてみてください。

(ライター/阿部祐子、撮影/鈴木愛子)