相談で起きがちな堂々巡り 普段からわが子の“事実”をつぶさに観察する

西村 お母さん、お父さんには、こんなふうに「相談する力」を育てていただく。一方、私達プロも「質問する力」を高めなければなりません。

 物理的にお子さんは家庭や塾で何をやっているのか。お母さん、お父さんは何を感じ、何をやっているのか。そういった具体的な事例を、私達講師もなるべく多く拾い上げなくてはいけないのです。そのことによって、初めて像が結ばれるのです。こういう勉強をしている、こういう頭の使い方をしている、と見ていくのがプロの役割だと思います。

 電話などでご相談を受けることも多いのですが、受話器を持つ手が痛くなるほど話すこともある。その理由は「聞きたいことが、なかなか聞き出せないから」なのです。お母さんの話が堂々巡りになっていく。すごく悩んでいらっしゃることは分かるので、お話を途中で遮ることもできない。

 そうした中で感じるのは、お母さん、お父さんが、もう少し、お子さんを客観的に見る目を持っていただきたい、ということです。相談が終わるころにやっとそれが実現したりするのですが……。普段からお子さんに対して、もう少し客観的に、事実をストレートに見る癖をつけていくことが、親としてのストレスを減らすことにもつながる、と感じます。

小川 やはり、一番重要なのは「相談上手になろう」ということです。

“子どもでなく、親のほうが頑張ってしまう”ことを防ぐ

小川 2つ目に大切なのは、「親にもできないことがあると認めよう」ということです。先ほど述べたように、特にお母さんに共通するのは「この子は、最後には自分のところに戻ってくる」という揺るがぬ思いです。だから、自分は完璧であらねばならないと頑張ってしまう。悩んだ結果、挫折してしまう人もいる。

 うまくいかないとき、親は自分一人でインターネットなどを見て、他人がどうやっているか調べるなど、自分なりに努力しようとします。でもそういう人の多くは、「子どもが力を発揮できるようにする」という目的からそれて、「自分が頑張る」になってしまい、「誰かに相談するのはよくない。もっと自分一人で頑張らないと」というストイックなモードになってしまう。さらには、せっかく相談に来ているのに「やっぱり、もう少し調べてから出直します」とおっしゃったりします。「私一人ではもうできない。教えてください」と言えなくなっているのですね。

 そんな方には「できない」と声に出して言うことをおすすめします。「できない」「ムリ」「ま、いっか」。これを5回ずつ繰り返すんです。これだけで5歳は若返りますよ(会場、爆笑)。

 実は、これは先生の側にも同じことが言えるのです。1人の先生が1人の子の問題を100%解決することはできません。私の職場でも、先生同士で相談し合うようにしています。先生の中にも相談できない人もいますから、「僕一人ではできない!」と言わせていますよ(笑)。