西村先生(以下、敬称略) 私も娘2人を受験させたことのある父親です。世間にあふれる情報を親という立場から見ますと、不安になるのも分かります。

 しかも、家族には夫婦と子どもだけでなく、親戚を含んだ色々な軋轢が潜んでいる。共働き家族であっても、家庭内で日々どっぷりとお子さんと向き合っているのはお母さんである場合が多い。だからこそお母さんは、中学受験を進めるうえでもストレスをため込んでしまいがちなんです。追い込まれてしまって、ますます何が本当か分からなくなってしまう。

 まずは、お母さんご自身がストレスをなるべくため込まず、発散できる環境をつくる。それが、子どもの受験にとって、実は一番大切な準備なのではないかと思います。本来、お母さんのストレスを受け止めるのはお父さんの役割。夫婦お互いが支え合い、そのうえでわが子の受験に臨む環境を、心がけてください。

「子どもは最後に私の元に帰ってくる」 だから、母親の悩みが深くなる

小川大介先生
小川大介先生

小川 私が代表を務める「SS-1(エスエスワン)」という個別指導塾は、一般的な個別指導とは少し違い、ご家族との面談を毎月設けるのが特徴です。面談の回数は既に累計1万件に達しています。

 面談はお母さんとすることが多いのですが、たくさんのご家庭の話を聞くことによって、お母さん達の悩みが一つの結論に集約されることが分かってきました。面談の途中で、子どもの愚痴を言う、怒る、泣き出す……。そんなお母さん達は共通して、「でも、この子が最後に帰ってくるのは私のところ。だから、私が頑張らなきゃいけない」と思い込んでしまっているのです。その絶対的な重圧感を受け止めるようになってから、お話しするのが楽になりました。

 子どもを愛しているから、子どもとも大げんかをするのです。でも、子どもが頑張れないことに対して、諦めてあげるのも愛情です。そうした複雑な思いを抱えているから、お母さんの悩みは深くなるのです。

 また最近は子どもの教育に積極的に参加するお父さんも増えています。中には夫婦で役割分担して、お互いの教育方針を論評し合うご夫婦もいます。

 では、私達プロは、そんなお母さん、お父さんに何を提供できるのか? と考えます。 

 私は、お母さん、お父さんに必要なのは「相談する力」だと思っています。今まで、十分に悩んできたじゃないですか。ですから皆さん「悩む力」は十分持っています。

 そこで、悶々と悩んできたことに対し、自分の子にとっての「正解」を導くために、プロから引き出すのです。それができなければ、塾や学校の先生はだいたいの見立てで一般論しか語ってくれません。それで納得して動いたら、それは正解ではない。パターンの話でなく、自分の子について相談しなければならないのです。