こんにちは。武蔵野大学講師の舞田敏彦です。夏休みの最中ですが、学期中にはできない体験を子どもにしてもらおうと、各地でいろいろなイベントが開催されている模様です。その中の一つに、大人の職場に子どもを招くものがあります。中央官庁の「子ども霞が関デー」は有名ですが、社員の子弟を招いて、ママ・パパの仕事姿を見てもらうなんていう企業も多いのではないでしょうか。

 狙いは子どもの社会見聞を広めることですが、もっと限定していうと、働く(仕事)とはどういうことかについて、思いを馳せてもらうことにあると思われます。昔なら、こういうことは日常生活の中で自然になされていたのですが、今日ではそうもいかなくなっています。就労モデルの不在。こうした状況に置かれている現代っ子にとって、上記のようなイベントは意義あることといえるでしょう。

 就労モデルの不在とは、父母などの身近な他者が額に汗して働く姿を目にする機会がない、ということです。現代日本の子どもがそうであることは、親の職業を知らない子どもの多さから知られます。

 そのデータをみていただきましょう。OECDの国際学力調査PISA2006では、対象の15歳生徒(高校1年生)に対し、父親の職業を尋ねています。職業名を記入してもらい、後から大まかなコードを割り振る形式ですが、「知らない(do not know)」と「曖昧(vague)」の者がどれほどいるかに着目します。後者は、会社員やサラリーマンなど、回答が曖昧で具体的な職業分類ができない生徒です。

日本の高校一年生の6人に1人は親の仕事をよく知らない

 日本の生徒でいうと、「知らない」が204人、「曖昧」が621人です。合計825人であり、有効回答全体(5475人)に占める比率は15.1%となります。 高1生徒のおよそ6人に1人が、父親の職業を明確に知らないようです。はて、この値は他国と比してどうなのか。56か国について同じ値を計算し、高い順に並べてみました。

資料:OECD「PISA 2006」の生徒質問紙調査
資料:OECD「PISA 2006」の生徒質問紙調査

 日本の15.1%という値は、他のどの国よりも高いことが分かります。 黄色マークの主要先進国の中では、段違いに高くなっています。わが国は、親の職業を知らない子どもが世界で最も多い社会であるようです。