これまで、国家公務員試験総合職(従来のI種に相当)からの採用は新卒がほとんど。新卒で入った省庁で長くキャリアを積み重ねていくというのが当たり前、「純血主義」の世界だった。しかし、多様な人材確保のため、2012年(平成24年)から公務員制度改革の一環として経験者採用試験を導入。2014年(平成26年)からは大幅に拡大するという。経験者採用拡大の狙い、それによって公務員の仕事や働き方はどう変わるのか。ワーキングマザーの先輩でもある、内閣人事局の定塚由美子審議官に聞いた。

定塚由美子(じょうづか・ゆみこ)氏。東京大学法学部卒業後、1984年労働省(現厚生労働省)に入省。厚生労働省職業家庭両立課長、福祉基盤課長、雇用均等・児童家庭局総務課長を経て、2014年5月に発足した内閣人事局審議官。

ダイバーシティを推進、女性を含めて多彩な人材を活用

定塚由美子内閣人事局審議官(以下、定塚) これまでも、新卒で就職した会社を退職、国家公務員の総合職試験を受け、採用される人はいました。数は多くないですけれど、ただ、これらはあくまでも係員から、つまり一から始めていただくという、そういうものでした。この2012年からスタートした経験者採用試験によって途中から入れるようになったのが最大の違いです。途中というのは今回の各府省合同の経験者採用の場合は係長からになり、総合職試験を受けた場合と同様の職務内容になります。

羽生祥子日経DUAL編集長(以下、羽生) 今、なんで経験者採用に力を入れることになったのですか?

定塚 当たり前といえば当たり前なんですが、民間企業などでいろんな経験をした方に、その経験を踏まえながら公務で活躍していただくことが、本当の意味でのダイバーシティにつながると考えから、経験者もきっちり採用していこうと考えています。

 もちろん、通常の転職でもいいですし、出産や育児で仕事を離れていたという人でも構いません。実際、(2012年からスタートした)経験者採用でもお子さんがいて入省した女性もいます。

 これまで「経験者採用試験(係長級・事務)」での採用者は8人中3人が女性でした。女性の採用・登用の拡大にも力を入れていますので、女性の方にもぜひ積極的に応募していただきたいと期待しています。

内閣人事局の定塚由美子審議官
内閣人事局の定塚由美子審議官

 「経験者採用試験(係長級・事務)」は大学卒業後2年以上であれば受験可能。試験は1次試験が公務員として必要な知能分野・知識分野の筆記試験(30題、2時間20分)と勤務経験などに関する経験論文試験。2次はグループ討議による政策課題討議試験と面接(人物試験)。受付期間は2014年8月15日~21日(インターネット)。詳細は人事院ホームページ

羽生 募集する府省庁も大幅に増えたのですね。

定塚 昨年は5府省でしたが、今年は14府省。外務省、防衛省を除くほぼすべての省庁ですね