家族のコミュニケーションツールとなるトビラ

 おいしそうなカレーを見てつばを飲みこんでいると、なにやら楽しげな音が聞こえてきた。腹の虫かと思ったが、そうではない。リビングのドアを開けたときに、音が鳴ったのだ。

 「オトノナル扉」は、その日の気分に合わせて扉が開く音を変えられるのが特徴。例えば子どもがピアノのコンテストで入賞した日には、「おめでとう」を表現する音でお祝い気分を盛り上げられる。

 試しに女性が扉を開けてみると、ハッピーな気分になれる弾んだ音が響きわたった。次に帰りが遅くなったお父さん役の男性が開けると、なにやら怪しげでどんよりした音が。きっとお母さんの怒りの気分を表しているのだろう。こんなふうに、扉も家族のコミュニケーションツールになるというわけだ。

遠く離れた人ともつながれる窓

 再び最初のダイニングテーブルを見ると、テーブル越しの窓になにやら見慣れない風景が写った。「インドに住むおばあちゃんが、孫のタカシ君のお誕生日をお祝いしてくれるそうです」……すると窓の向こうにおばあちゃんが現れた。手にはお誕生日ケーキ。ローソクに火をつけたおばあちゃんが「タカシ、おめでとう」と、ケーキをこちらに差し出す。こちら側にいるタカシ君が息を吹きかけるとあら不思議、ろうそくの灯が風に揺らいで消えたではないか。

 この「ツナガル窓」は、遠くにいるおばあちゃんや友だちと、リアルタイムに会話やコミュニケーションができる窓なのだ。スカイプなどのビデオチャットソフトのようにネットワークを通じて会話できる。この日は日本から遠く離れたフィリピンのセブ島の子どもたちとも接続し、箸で豆をつまむリレーゲームも試した。“ツナガル”ことが日常的なことになると、家族とのコミュニケーションのあり方が変わったり、家にいながら海外の人たちと交流することもできるようになる。

ダイニングテーブルの向こうにもう一つ食卓が並ぶ。離れたところに住む人とも一緒に食事が楽しめる
ダイニングテーブルの向こうにもう一つ食卓が並ぶ。離れたところに住む人とも一緒に食事が楽しめる

窓を通じて風も伝わるのが特徴。8月6日のイベントでは窓の向こう側からバースデイケーキのろうそくの灯を消してみた

 三井不動産レジデンシャル市場開発部の川路武さんは、「家そのものが人のパートナーとなるような存在になり、家族の絆が深まる仕掛けを見ていただきたい」と話す。実際に2020年の住まいがこうなるかどうかは別として、これからの住まいについて考えるいい機会になりそうだ。イベントは予約制で、8月23日から31日にも開催される。