●服装
 歌舞伎やダンスなどの公演と比べると、ミュージカルの観客の服装は概してカジュアル。華美な服装でなくても気後れする必要は全くない。
 ただし、ファミリー・ミュージカルに関しては、作品に因んだファッションや親子ペアルックを楽しむ観客も少なくない。欧米の劇場ではおしゃまなフォーマルドレス姿の子供たちを見かけるが、「形から入る」ことで劇場が特別な場であることを認識し、観劇マナーを身に着けさせるという狙いもあるようだ。
 せっかくの機会、お洒落も「観劇の一部」として親子で楽しんでみては?

●持ち物
 ふだんの子連れ外出で持参するもの一式に加えて、劇場内はどちらかというと温度設定が低めなので、気温調節のできる羽織りもの(カーディガン、ストールなど)を持参しておくと安心。トイレトレーニングが終わったばかりの子の場合、初めての場所で緊張のあまり…ということも考えられるので、紙おむつも一枚。
 上演前や幕間に「おなかがすいた」ということもありうるので(場内に販売コーナーもあるが、並んでいる時間を省略したい場合)飲み物やちょっとしたお菓子(ビスコのような腹持ちのよいもの)、軽食(おにぎりのような扱いやすいもの)も持っていくと便利。

公演によっては、作品にちなんだスタンプや記念撮影用のボードがロビーに設置されていることもある。写真は四季劇場「夏」ロビーに置かれていた『リトル・マーメイド』のスタンプ
公演によっては、作品にちなんだスタンプや記念撮影用のボードがロビーに設置されていることもある。写真は四季劇場「夏」ロビーに置かれていた『リトル・マーメイド』のスタンプ

●当日の到着時間
 開演前にトイレに入っておけば上演中も安心なので、開演10分前には着いておきたい。
 ゆとりがあれば劇場内のショップを覗くのも楽しい。演目によっては登場人物の姿が描かれた「記念撮影スポット」が設けられている場合もあるので、カメラ(スマホ)も用意しておくと記念になる。

 以上、知っていて損はない情報をご紹介したが、子連れの場合、どんなに準備をしていても「クライマックスで突然トイレに行きたがり始めた…」「え、このキャラクターが?と思えるような登場人物を怖がって泣きだした…」など、予測不可能な事態も起こり得る。

 一度そんなことがあったからといって「失敗だった…」と凹むのではなく、劇場の施設やサービスも上手に活用しながら、徐々に親子で「観劇」に慣れていってはいかがだろうか。

 今回はミュージカルの基礎知識を解説したが、次回は実践編。国内の劇団の中で、施設やサービス内容など、親子向けのプログラムが充実している劇団四季を例に取って解説する。数ある劇団四季のミュージカルの中から、特に親子に向いている演目も紹介しよう。

(文/松島まり乃 写真/中川真理子)