20代後半になると結婚し家庭を持つ者が増えるので、育児・家事・教育も目立ってきます。言わずもがな、女性だけの図でみると、これらの比重はもっと大きくなります(性差については後で触れます)。その後はというと、30~50代にかけて「収入・家計・借金」の悩みがほぼ同じ割合で継続しますね。子の教育費や住宅ローン返済に関わるものでしょう。

 60になり老年期にさしかかると、自分や家族の病気・介護にまつわる悩みが台頭してきます。また60代では「生きがい」の比重が比較的高いことにも注目。退職に伴うアイデンティティ喪失の表れでしょう。「一線を退いた。さて、これからどうするか…」。仕事一辺倒で生きてきた者ほど、こうした喪失感にさいなまれる度合いは高いと思われます。女性にしても、「夫がこれからずっと毎日家にいる」と思うと、気が遠くなるなんてことも。後で述べますが、この時期の生きがいの悩みは、男性よりも女性で多くなっています。

 図1は、寄せられた悩みの内訳図ですが、それぞれの悩みを抱える者がどれほどいるかという絶対量も気になります。育児で悩んでいる者が調査対象者の何%いるか。こういう値も出してみましょう。手始めに、「育児」と「自分の仕事」の悩みがある者の比率を計算してみました。図2は、年齢層ごとの数値をつないだ折れ線グラフです。性差もみるため、男女の2本の曲線を描いています。

資料:厚労省『国民生活基礎調査』(2013年)
資料:厚労省『国民生活基礎調査』(2013年)

 育児の悩みは30代の女性で多くなっています。およそ16%、6人に1人です。 絶対量としては多くないですが、男女の差がすさまじいですね。同じ子育て期にあっても、育児の悩みの量がこうも違うとは。育児負担が女性に偏っていることの表れでしょう。一方、仕事の悩みの率は男性で高くなっています。働き盛りの40代にピークがあるきれいな型です。女性は、20代後半から30代にかけて率が下がりますが、結婚・出産に伴い職を辞すケースが多いためと思われます。ここにも男女の典型ライフコースの差が如実に表れていますなあ。