結婚や出産を機に退職し、専業主婦として働いている女性が再就職を考えるとき、「起業」も選択肢の1つになる。最近は昔と違い、気軽に起業にのぞむ女性も現れ始めた。特集「無理せず挑む! 『甘い起業』がいい理由」では、まず再就職を目指す女性を支援する関西学院大学の実践講座「ハッピーキャリアプログラム」の責任者、大内章子准教授に「最近の起業」について話を聞き(「女性目線で勝負!『』甘い起業』がいい時代」)、ついで実際に起業を果たした金城貞見さんに起業した理由や苦労した点、やりがいや楽しさを聞いた(「結婚しているから、家族が大事だから起業を決意!」)。

 最終回に紹介するのは荒木登希さん。第一子を出産した後、起業講座で勉強し、パーソナルスタイリストとして起業を果たした。現在は個人客の買い物に同行してその人に合ったファッション、洋服の選び方を提案する同行ショッピング、骨格診断によるファッションアドバイスなどを大阪で行っている。彼女が起業に踏み切った理由とは?

関西学院大学ハッピーキャリアプログラム
職場復帰を目指す育児休業中の女性、再就職・起業を目指す女性のための準備講座。2008年から開催されており、キャリアデザイン、モチベーション・マネジメント、企画・経理・営業・管理などの専門スキルを半年かけて学ぶ。これまでに115人の修了生がおり、そのうち約20名が起業を果たした。プログラムなどは記事「就職率8割以上 大学が磨き直す主婦の底力」参照。
http://www.kwansei-ac.jp/iba/happycareer/

子育て中に気がついた「このままダサくなりたくない!」

――そもそも荒木さんはどのような仕事をしていたのですか。

 大学卒業後、アパレル会社に入社して若い女性向けブランドの販売職に就きました。当時、とても人気の高かったブランドでしたから、接客が楽しかったし、売り上げも絶好調。同期では一番早く25歳で店長を任されました。結婚したのはこのころです。

 27歳のときに異動で売場を離れ、商品企画、スタッフ教育などを担当していました。

 仕事はとっても楽しかったのですが、ブランドの人気に陰りが見え始め、毎日本当に忙しく、しんどかった。朝7時30分には出社してデスクワークをし、その後はショップに出向いて閉店までいますから、帰宅は23時ごろになります。

 上司は「いい服を作ったら売れるはずだ」と言うけれど、そのころから私は「どんなにかわいい服を作っても、うちのブランドだというだけで、もう誰も見向きもしてくれないんだ」とネガティブな考えにとらわれるようになってしまって。結果を残せない苦しい思いを抱えたまま、28歳で退職しました。

 今、考えてみると、このときの悔しさが起業の原動力になっているかもしれません。