自分の子どもは「もう九九ができる」と、ちょっと誇らしく思っているお母さんは多いでしょう。しかし油断は禁物です。正確にすべて覚えているわけではない子どもは、決して少なくありません。虫食いのように、いくつかの記憶が抜け落ちてしまっているのです。
 でも、たとえ思い出せなかったとしても、対処法を知っていれば補うことができます。
 7×8が言えなくても、7×7がわかっていれば、
 「7×7は49だから、それに7を足せばいいんだ」
 と、こんなふうに考えられるかどうかです。

 そのために必要なのは、「熟練」と「思考」です。
 「熟練」は、とにかく数字を自由に使えるように、基礎的な訓練を積み重ねることです。九九を日々、繰り返し唱えて覚えることもこれにあたります。

 大工さんだって、カンナやノコギリなどの基本的な使い方が訓練できていなければ、家を建てることはできませんよね。でも、かといってそれだけでは家は建ちません。
もうひとつ必要なのが「思考」です。これは、
 「5×4の意味は何?」
 と尋ねたら、
 「5を4回足すこと」
 と答えられるようになることで、つまり、かけ算の意味を理解することです。
 繰り返し唱えることで慣れて、さらに理解ができて初めて、九九が子どもの脳に定着したと考えていいでしょう。

 ちなみに計算問題で、かけ算はいいけれど割り算になると急にスピードが遅くなる子のほとんどは、九九の不慣れが原因です。
 45÷9を計算するときには、瞬間的に9×5=45を思い浮かべる必要がありますが、割り算が苦手な子は、その時に9×1=9、9×2=18……と、順に言っていかないと答えの5を見つけられない程度の「熟練」度で止まっているからです。

 ほんのわずかでも九九のミスがあったり、割り算が遅い場合は、100マス計算に戻ることをおすすめします。これは、たとえ小学6年生であっても有効な方法です。小6生であれば1カ月、小5生なら2~3カ月、小4生なら半年ほどを目安にやってみてください。

硬貨などを使って数を視覚化して訓練する

 もし子どもが数を扱うこと自体が苦手であれば、私は可視化することをすすめています。
 たとえば8-□=2の答えがわからないなら、1円玉を8個机に置いて考えさせます。硬貨を使っての学習は、十進法の感覚を身につけさせるうえで効果的です。