2012年度の『東京都税務統計年報』によると、港区の住民一人当たりの課税額は42.2万円です。最優良型の6市区の平均値は21.7万円であり、都平均の14.4万円を大きく上回っています。他のタイプについても同様に平均値を出し、グラフにすると図3のようになります。

*住民1人あたり課税額の平均値である。カッコ内は該当する市区の数。

資料:『東京都税務統計年報』(2012年度)
*住民1人あたり課税額の平均値である。カッコ内は該当する市区の数。 資料:『東京都税務統計年報』(2012年度)

 ほう。最優良型が最も高く、要努力型に近づくにつれて低くなるというリニアな傾向が見られますね。子どもの学力や体力は、各地域の教育実践の成果(指標)と考えられがちですが、それとは別の社会的な条件によって規定されていることも知られます。

 子どもの学力にせよ体力にせよ、やはり「おカネ」と関連している側面があります。前者は、通塾や参考書購入の費用を賄えるか、落ち着いて勉強できる環境があるか、というような経路です。後者の体力についても、昔に比べて遊び場が減る中、有償のスポーツクラブ等に通える子が有利になっているとも聞きます。子どもを狙った犯罪が増えているので、子どもだけでの外遊びを禁止する学校もあるのだとか(ホントかどうかは知りませんが)。こういう状況ですので、家庭の経済力に由来する「体力格差」にも注意を払わなければなりません。

教育による社会的不平等の克服のために

 今回のデータは、このようなことに留意しながら読んでいただきたいと思います。地域の条件を度外視して、「ウチの区の学校は何をやっとるんじゃ」という批判の材料に使ってほしくはありません。

 行政の側にも同じことを望みます。行政がなすべきことの一つは、不利な条件があるにも関わらず高いアチーブメントを出している地域を析出し、当該地域でどういう実践が行われているかを丹念に観察し、それを広めていくことです。このことは、教育による社会的不平等の克服にも寄与します。学力テストや体力テストのデータは、このような仕事にも活用されるべきでしょう。

 今回はこの辺りで。次回は,人生各時期のお悩み一望図をご覧に入れようと思います。今のご自分の悩みが普遍的なものなのか,これから先,どのようなトラブルに見舞われる可能性が高いのか…。こういう見通しを持っていただくための材料の提供です。お楽しみに。