妻が就職するタイミングで、たとえ1カ月でも育休を取得すれば、子どもも慣らし保育を経て比較的スムーズに保育園に慣れることができただろう。1カ月で有休を使い切った結果、妻は体調が悪くても会社を休むことができず、苦しい1年間を過ごすことになった。

 この経験を経て、井口さんは「育休は決して“ぜいたく品”ではない。男にとっても“日用品”であると考えるべきなんだ」と強く思ったという。

 「男性の育児休暇制度を新設する企業は増えていますが、どの企業においても取得率は決して高いとは言えません。『取りたい人が取ればいい』では、取得率は増えません。日本生命保険が、男性職員の育休取得100%を目標に掲げ、実際に達成しました。1日や2日取っても意味はないというような声もあるようですが、同社のように一律に取得させるように促さないと、『男が取得すると印象が悪くなるのでは? 評価に関わるのでは?』などのネガティブイメージが拭いきれず、取得しづらいものなのです。たとえ短期間であろうとも、一律で取らせるよう制度変更することには、大きな意義があると思いますね」

3人目が産まれた直後に転勤の「壁」

 つい先月、井口家には第3子が誕生した。まだ手がかかる5歳児、2歳児も抱え、てんやわんやの毎日だ。しかし、何とこのタイミングで、井口さんには名古屋への異動辞令が下る。辞令から着任までは、わずか3週間しかなかった。