娘の体を拭きながら、こわかったんだねー、しょうがないねー、また今度花火見ようねー、と声を掛けていると、突然、ある男性から「かわいいですね。おいくつですか?」と声を掛けられました。聞けば、東京から社員旅行でやってきた彼にも生後6カ月になるお子さんがいるとのこと。
「でも、なんだか子育てに参加できていない感じがするんです」
ああ、わかる! 僕もそうでした。
自分が他人に子育てについて話すようになるなんて…
あやそうとして子どもを抱っこしてもすぐに泣かれてしまうのですが、ママに抱っこしてもらうとすぐに泣きやみます。父親とはなんて無力なんだ……と悩んだものです。街で母親も一緒にいるのに悠々と子どもを抱っこして歩いている父親の姿を見て、うらやましいと思ったことも一度や二度じゃありません。
「マァ、そういう時期もありますよね。でも、子どもが成長すれば自然と二人でいる時間も増えていくし、心配いりません。大丈夫ですよ」
僕の言うことにフンフンとうなずく彼。こんなふうに自分が他人に子育てについて話すようになるなんて……。子どもが生まれた頃は思いもよらなかったなぁ。
明治から昭和にかけて活躍した物理学者で随筆家でもあった寺田寅彦の言葉です。本当に、子育てを通して学ぶことや子どもに教えられることはとても多いと感じます。僕自身も子どもと一緒に成長していければと思っています。
ああ、それにしても露天風呂……と部屋に帰って妻にしくしく話していたら、翌日は一人で行かせてくれたので満喫することができました。ありがとう、妻。
(文・写真/大山くまお)