さて、夜です。ホテルにはスパがあったので、娘と一緒に向かいました。有料ながら露天風呂付きの大浴場なので、風呂好きの僕はとても楽しみにしていたのです。いつもはお風呂を嫌がる娘も、昼間のテンションが残っていたのか素直についてきてくれます。お金を払い、洗い場で体を洗って、さぁ、お風呂! と思ったら、なぜだか娘が大泣きし始めてしまいました。
「お風呂イヤだ! ママー! ママー!」
大浴場に娘の泣き声が響き渡ります。あわてて娘を抱え、気分を変えようと露天風呂へ行ってみたところ、なんと、夜のビーチで巨大な打ち上げ花火がドーン! ドーン! と始まりました。露天風呂は特等席です。これはいいぞ! さぁ、娘、露天風呂と花火を楽しもうじゃないか!
「イヤだー! こわいー! 出る―!」
仕方なく、膝までつかっただけでスパから退場しました。ああ、入場料が、露天風呂が、花火大会が……。思わずため息をつきそうになりましたが、そのときはたと気づきました。
子どもの気持ちを一度受け止める
露天風呂に入りたい、花火を見たいというのはしょせん親の希望にすぎません。この子にしてみれば、薄暗いお風呂場や大き過ぎる花火は、怖いだけの存在なんじゃないかと。
「子育てコーチング」を行っている川井道子の著書からの一節です。
川井さんは、子どもが泣いたりぐずったりしてもイライラしないためのアドバイスとして、頭ごなしに否定したり叱ったりするのではなく、子どもの気持ちを一度受け止めて「あなたの気持ちは受け取った」とサインを送ることの大切さを説いています。「そうすることで子どもは安心感や自信を育み、自己肯定感を高めていくことができる」のだそうです。
川井さんの言葉の通り、2歳の娘が今すぐ自分の気持ちをコントロールできるようになるとは思いませんが、僕もなるべく彼女の気持ちを大切にしてあげたいと思います。だってまだ子どもなんですから。そう思って脱衣所で娘を見ると、おむつ一丁のままヘンなポーズで「ゴメンなさいねー」と言いながらニコニコしていました(最近この言葉が彼女の中ではやっているのです)。