1年生の教室をのぞくと、前歯の抜けた愛嬌たっぷりの笑顔が数名、こっちを向いて「校長先生!」と声をかけてくれる。家では、娘が「前歯がぐらぐらする」と訴える。同じ年の子どもを、家でも職場でも見ているのは不思議な感覚だ。

 「明日はオカアチャンもプールに入るねん」と話すと、娘がうらやましがる。娘と会う時間より、確実に学校にいる時間のほうが長い。楽しいことの多くを、学校の子ども達と分かち合っている。悪いなぁ、と娘の寝顔にため息をつく夜が多い。

「仕事モード」が解除できない

 6月中旬に、娘の小学校で学校公開があり、休みを取ってようやく娘の様子を見に行くことができた。1時間目から終日公開しているので、朝の登校直後からプール指導、給食まで校内をくまなく回れる。別の学校に学ぶことは多い。図書室の蔵書量や整理の仕方をメモする。安全面での死角は無いか、廊下の端や校舎裏をのぞく。

 教室に入ると、棚に放りっぱなしの汚れた雑巾が気になる。じっと眺めていたら担任の先生がヒュッと片づけた。ただでさえ緊張する学校公開、若い先生に無用なプレッシャーをかけるつもりはないのだが、つい「校長モード」になってしまう。

 いずれにせよ、全校児童94名の我が敷津小学校と900名を越すマンモス校では、比較が難しい。廊下にあふれる子どもの多さに圧倒される。大規模校の養護教諭が「保健室なんて野戦病院ですよ!」と怒っていたが、これだけの人数がいればそりゃ大変だと納得する。

敷津小学校では1人が2つのロッカーを上下で使っているのだが、娘の小学校ではそんな贅沢は許されない。壁にずらっと並んだランドセルは壮観だ
敷津小学校では1人が2つのロッカーを上下で使っているのだが、娘の小学校ではそんな贅沢は許されない。壁にずらっと並んだランドセルは壮観だ

 娘に目を転じると、嬉しそうに小さく手を振っている。保育園で一緒に育った子ども達も、「Sちゃんママ!」と寄ってくる。自分にも、家庭と地域社会があったことを思い出した。みんな大きくなったなぁと嬉しい気持ちで他のクラスも見て回る。ピン、と仕事アンテナが立つ。同じ学年が4~5クラスもあると、教室環境の違いが気になってくる。