学校に電話したいが、欠席連絡すら電話を禁じられているのでかけにくい。放課後の忙しさも知っている。じっと待つしかない。それからさらに20分過ぎて、ようやく帰ってきた。学校の下駄箱でしゃべっていたという娘を、叱り飛ばしたい気持ちを抑える。年に数回あるかないかの「帰ったらオカアチャンがいる」貴重な機会を大事にしたい。

 おやつを出そうとして、プールバッグが無いのに気がつく。

「プールの用意は?」

「……あっ、忘れてきた」

 せっかく、今日はあなたと2人でお出かけしようと思ってたのに。帰ってくるのが遅いから、行けなかったやん。心の弱い母親である私は、言葉の端にもらしてしまいそうになる。そこで救いになるのは、校長モードの「仕事スイッチ」だ。

 「一緒に取りに行こうか。次から気をつけようね」

 毎日、学校のあちこちに帽子や体操服を忘れて帰る子どもたちを思い出せば、なんてことはない。1年生なら、よくあることだ。一番「しまった」と思っているのは、子ども自身だ。責めても意味はない。

 手をつないで小学校にもう一度向かう時、娘は軽くスキップをしていた。下の子が生まれて6か月の時に、校長になるための研修が始まった。それから、1年半。母娘だけでいられる時間は、ほとんどなかった。

「今度の日曜日、2人でお出かけしよっか」

「うん!」

 親脳と仕事脳。切り替えのコツを、少しつかんだ気がする1日だった。

 最後に、「校長先生、娘さんのところに行ってあげてくださいよ!」と後押ししてくれた、教頭先生や教務主任達に感謝を述べておきたい。家族を大事にしてほしいというメッセージが、自分のところに返ってきた気がする。みんなの心遣いが、嬉しい日でもあった。