少子化に対して日本はどのように取り組んでいけばいいのか。内閣府が設けた有識者会議「少子化危機突破タスクフォース(第2期)」に参加した池本美香さんが、日本総合研究所の勉強会で発表した見解を紹介します。前回(「少子化対策の主役は『国』ではなく『親と子』」)に続き、今回は同じような問題を抱えている韓国の取り組みを、日本の政策と比較します。
保育インフラの拡充に向けて、さまざまな仕組みを用意
前回は、タスクフォース第2期の内容と、そのなかで私が感じたことに付いてお話ししてきました。では、これから日本では、どのように少子化対策に取り組んでいけばよいでしょうか。
私は、少子化対策というテーマでは、諸外国との政策の違いで日本のことを考えている立場にあります。日本と同じような状況で、日本と同じ問題を抱えている韓国の取り組みが分かれば参考になるかと思い、韓国の少子化対策について調べてみました。
韓国は、非常にバランスよい対策をとっています。
2006年に公開された「第一次低出産・高齢社会基本計画」では、 1)産・養育に対する社会的責任の強化 2)ファミリー・フレンドリーな男女平等社会文化の助成 3)未来世代の健全な育成、 という3つの推進課題を挙げています。この対策の効果は、まだはっきりと表れてはいませんが、子どもや子どものいる家族の福祉向上が図られています。もしさほど出生率が上がらなかったとしても、人材の質向上で量の不足をカバーしようという方向は、評価できると私は思います。では、これらの対策の内容について、ひとつずつ見ていきましょう。
1)の「出産・養育に対する社会的責任の強化」の内容は、 「子どもの養育に対する経済的・社会的負担の軽減」 「多様で質の高い保育インフラの拡充」 「妊娠・出産に対する支援」 となっています。この中の「保育インフラの拡充」について見てみると、すべての子どもに対して保育を受ける権利を保障する「普遍的保育」、さらに2013年には全所得階層の0~5歳児に対して無償で保育を受けられる「保育無償化」を実現しています。