施設、環境、立地など共働きに適した条件がそろうエリア

 こうしてみると、湾岸マンションがDUAL世代にウケる理由がいくつか浮かび上がってくる。まず共用施設や設備の充実ぶりだ。フィットネスやスパ、ゴルフシミュレーターなどは忙しい合間の気分転換や運動不足解消に役立つ。バーベキューコーナーやパーティールーム、ラウンジなど子どもと楽しめるスペースもありがたい。ディスポーザーやゴミステーションは家事の負担を軽減してくるし、キッチンスタジオやゲストルームがあれば来客時も自宅を汚さずに済むので掃除がラクになるだろう。

 子育てに役立つ施設も注目できる。保育施設を併設しているケースは典型的だ。併設していないまでも、周辺に保育所や保育園が充実している物件も少なくない。最近では公立や私立の小・中学校を新設するエリアも増えており、子どもが成長してからの教育環境も整いつつあるようだ。

 東日本大震災の直後は液状化のリスクなどが懸念された湾岸エリアだが、その後は対策も進み、むしろ災害に強いエリアとして認識されつつある。震災でも建物はあまり被害を受けなかった物件が多いうえに、最近のマンションは免震や制震を導入したり、備蓄倉庫や自家発電装置を強化するケースが目立つ。周囲に木造の建物がほとんどなく、道路や土地区画が大きいので火災時の安全性も高いとされている。

 都心へのアクセスは、共働き世帯の必須条件だろう。その点、湾岸エリアは距離的に都心に近いうえ、地下鉄やゆりかもめ、バスなどの交通手段が発達している。立地条件によっては自転車や徒歩でのアクセスも可能なエリアだ。

 恵まれた立地条件な割に、物件価格がリーズナブルな点も見逃せない。江東区の物件などでは坪単価が300万円を切るケースが多く、山手線内側エリアの物件と比べて100万円前後割安な場合もある。20坪(70㎡弱)の住戸で2000万円前後の価格差だ。

 さらに着目すべきは資産価値だろう。2020年の東京オリンピックに向けて、湾岸エリアではマンション価格が上昇するとの見方がもっぱらだ。人口減や高齢化といった懸念材料はあるものの、都心部では今後もしばらくは人口や世帯数の増加が続くと予測されている。家族構成の変化などで住み替えが必要になったときに、売ったり貸したりしやすいことはプラス要因といえる。

 湾岸エリアでは今後も活発なマンション供給が続くと見られており、DUAL世代にとっては住まい選びの選択肢の一つとなり得るだろう。

(文/大森広司、写真/武田光司)