娘2人もワーママの道へ 今度は自分がババチャリに乗る番

―― 忙しくて子どもと触れ合いたくても時間がつくれない……そんな厳しい状況のなかで、良好な親子関係を築いてこられた秘訣は何でしょうか。

坂東 いつも良好というわけではありませんよ(笑)。それでも、諦めなかったからでしょうか。思うようにならない状況や自分を諦めないで、何とかまともな親子になりたいとか、ちゃんとした社会人になってほしいとか、ずっと思い続けて、自分なりにベストを尽くしたんです。100パーセント完璧ではないけれど。

 子どもが小さいうちはなかなか効果が出なかったかもしれませんが、そんな気持ちが子どもの成長過程のなかでじわじわと伝わったのかなと思います。

―― そういう姿を見て育ったお嬢さん達も、仕事を持ちながら家庭を築くという選択をされているんですね。

坂東 はい。2人ともワーキングマザーです。長女は薬剤師で製薬会社の研究所で働いており、次女は医師をしております。女の子は学歴よりも手に職というか、資格を持っていることが重要だということが私自身、身に染みていましたので。

 それでも、私のときと同じように、仕事と育児の両立は大変で、私がババチャリに乗ることになるわけです(笑)。孫の送り迎えなど、色々と協力しています。

 とはいえ、それも仕事の傍らですから、専業のおばあちゃんに比べれば「まだまだ足りない」と娘から責められることもあります(笑)。実際、私自身は実母にあれだけ助けてもらっていましたからね。

 働く母親の背中を見て育ってほしいという母親の気持ちは、ある年齢まではなかなか伝わらず、反発されるだけで理解してもらえないことも多いです。それでも高校生ぐらいになると伝わります。今も大切にとってあるんだけれど、娘からもらった母の日のカードに「今までいつも意地悪ばかり言ってごめんね」と書かれていて。そんな優しい言葉をもらったのは初めて(笑)。

 成長することで、子どもの視野が広がり、親と一対一の関係ではなくて、多角的に捉えられるようになったのでしょう。私が直接何かしたわけではないのですが、私を知っている人が「お母さん、頑張ってるね」と間接的に言ってくれたり、あるいは娘の友達が自分の親について批評しているのを聞いたりして。振り返ってみれば、働く母親でよかったと思っています。

―― 諦めるものは潔く諦める、けれども親子関係に関しては決して諦めない、ということでしょうか。

坂東 人生にはいろんな可能性がありますが、自分で生きられる人生は一つだけなんですよ。選択するということは、他は諦めるということです。終わってしまったことを、うじうじ言っても仕方ない。

 そうはいっても、私は決してうまくできたわけではなく、むしろとっても不器用でしたね。良かれと思ってしたことがかえって反発を招いたこともありました。一緒に海外で暮らそうと子どもを誘ったのに、断られたりね。そうされたら私も傷付いて、しばらくは立ち直れない。でも子どもとの関係においては、諦めませんでしたね。