長女から「子どもよりキャリアを優先した」と憎まれ口をたたかれて……

―― 単身でもアメリカに行くと決めたのは、やはりご自身のキャリアにおいて重要だと考えてのことでしょうか。

坂東 そうですね。「子どもよりもキャリアを優先した」と、長女にはさんざん憎まれ口をたたかれました。さすがにもう言いませんが、難しい年ごろは、そんなこともありました。

 そう言われたら? ひたすら、「ごめんね」と謝るしかないですね。

 それでも、アメリカに行ったことは、私の人生においてとても大きな意味を持っているのです。実のところ、キャリアにそれほどプラスになったわけではないのですけど、人生観を変えるというか、社会的視点を広げるうえでは本当に役に立ちましたね。

 当時のアメリカはちょうど今の日本のような状況だったんです。女性達が社会に進出しても、まだ社会の理解が十分ではなく、メンターやロールモデルとなる存在が少なくて、女性同士のネットワークを構築する必要があって……。

 今、日本で言われているのと同じことを、ちょうどアメリカの女性達が経験していたんです。私自身、これは自分個人の問題なのではなくて、社会の問題なんだと確信できたのは、あのころですね。

―― 帰国後、坂東さんが取り組んでこられた男女共同参画社会など、様々な課題に向き合うきっかけになったのですね。

坂東  ハーバードで知り合った女性達以外にも、重要な出会いがありました。例えば、ホストマザーのメアリー。彼女は家庭に専念してきた主婦で、私を無償の愛で包んでくれました。外国から来た留学生を心からサポートしてくれて、アメリカっていいところがあるんだなあと実感したんです。と同時に、私も将来、そういうことをしなくてはと感じましたね。他にもいくつもの出会いを通して、人生が豊かになりました。