『子どもが育つ魔法の言葉』というミリオンセラーがあります。でも、そんな魔法がより切実に必要なのは、日々子育てや仕事に追われている大人のほうかもしれません。そこでキャリアと子育てを両立し、酸いも甘いもかみ分けてきた諸先輩から、体験談を通し、唱えると不思議と心が落ち着く、そんな大人のための「魔法の言葉」を伝授してもらいます。

シリーズ第1弾として、昭和女子大学学長の坂東眞理子さんが登場。坂東さんは総理府(当時)に入省後、当時まだ珍しい存在であった女性キャリア官僚としての道を切り開いていきました。女性の社会進出の先駆け的存在であり、男女共同参画社会、ワークライフバランスを提唱してきた坂東さん。

一方、プライベートでは2人の娘を持つ母親の顔を持っています。そんな坂東さんの子育ては、いったいどのようなものだったのでしょうか。葛藤や失敗談も包み隠さず明かしながら、終始にこやかに振り返ってくれました。働く母親ならではの悲喜こもごもを経験した坂東さんの話には、現役子育て世代にとってのヒントがたくさん隠されているはずです。

100パーセント完全な親なんて、どこを探したっていない

昭和女子大学学長の坂東眞理子さん
昭和女子大学学長の坂東眞理子さん

坂東さん(以下、敬称略) 私は本当にダメ母親でした。『親の品格』を出すことになったとき、娘達から「この本を出す資格はあるのかしら?」とからかわれたくらいです。それでも自分を励ますために自分に言い聞かせてきたのは、「100パーセント完全な親はどこにもいない」という言葉。

 みんなそれぞれ悩みを抱えながら親業をやっていると思うんです。例えば私は、専業主婦のお母さんに比べたら、手作りのおやつは用意できないし、学校行事に行くこともできない。

 でも、専業主婦のお母さんだって、働く母親ほど経済的な支援はしてあげられないと思っているかもしれない。あるいは、子どもにちゃんとしたアドバイスをするために必要な社会経験を持っていないと感じているかもしれない。

 私自身も、専業主婦だった自分の母親を100パーセント完璧だったとは思っていませんでした。お母さんもお父さんもそれぞれに、完全でない部分を抱えている。世界中探したって、不完全な親しかいないと私は思うんです。