米国で「キャリアを形成し、30代半ばで出産」という考え方を知り、2人目を

―― 2人目のお子さんを出産することになったきっかけは何だったのですか。

坂東 長女のときとは、少しずつ状況が変わってきたのです。まず一つには、私の父が亡くなってから、母の時間と行動に自由が利くようになり、実家の富山から東京に出てきて長くとどまってくれるようになったことがあります。「子育てと仕事の両立で大変そうでしょう?」とこちらから積極的にアピールするなどして、そうなるように仕向けたという一面もありますが(笑)。母が元気なうちなら、もう一人産むことも可能かなと思い始めました。

 それからもう一つは、34歳でアメリカに行ったときの経験が影響していますね。

―― 1980年にハーバード大学の客員研究員として渡米されていますね。

 当時、アメリカは日本よりも女性の社会進出が進んでいて、そんな女性達の間には“Establish your career first, and then create a family.” という考えがあることを知りました。

 まずはキャリアを形成し、30代半ばで子どもを産むというストラテジーです。それを実践する女性が何人もいたんです。当時、私もちょうど30代半ばでしたから、あ、それならもう一人産めるのでは? と考えたわけですね。

 仕事の面でも、15年近く働き続けていましたから、いろんな意味での力が、自分にも備わっていると思えるようになっていました。単に知識が増えたというだけではなくて、理解者や協力者が増えたということもあり、若いころに比べて仕事がしやすくなっていたんです。

 経済的にも余裕が出てくるし、また管理職になると、会議はすべて日中に設定するなど、スケジュールのやりくりにも多少の融通が利くようになって。だから“establish career first”のほうが、少し余裕をもって子育てできるんだな、というのが個人的な実感です。

* 次回は、娘2人の育児・家事と仕事を両立するのに欠かせなかった「チーム作り」を取り上げます。「坂東眞理子 子育てで肝心なのはチーム作り」へ。

(ライター/井伊あかり、撮影/蔵 真墨、協力/Integra Software Services)