―― 『親の品格』には、「社会的な役割と母親としての役割の両方とも100点になろうと思ったら無理が出てくる。60点の親でいい」という記述があります。

坂東 「100パーセントでなくていい」というのは、仕事にも当てはまると私は思っています。

 私は公務員として、法律はそこそこ分かるけれど、とても強い人に比べれば60~70点。英語も少しは話せるけれども、本当にできる人に比べれば50~60点。文章を書くのも好きだけど、芥川賞を取れるわけではない。

 でも、誰にも負けない強みというものはなくとも、色々なことをそこそこできる自分というのは、それだけでとてもユニークな存在なんですね。一つ一つのパートを見ると、ここもダメだな、あそこもダメだな、となるけれど、トータルすれば自分しかいない唯一の存在になっているんじゃないかなと思うようにしています。

 そんなふうに考えて、仕事で60点、親としても60点、でも足せば120点になる。それでいいんです。

週末は電車に乗らず、自転車行動圏内で子どもと過ごす

―― 60点の子育てのなかでも、これだけは守ろうと思っていた自分だけのルールはありましたか。

坂東 週末は電車に乗らないと決めていました。家の周りで、自転車の行動圏内で子どもと過ごそう、と。

 私は公務員生活が最も長く、34年間にわたりました。それはそのまま、子育て期間とも重なっています。

 朝は保育園に送っていけても、夜は仕事でどうしても帰りが遅くなってしまう。だから夕方からは、長女のときは保育ママさんが、次女のときは実家の母に面倒を見てもらっていました。そういう意味で、平日、私はダメなお母さんだったわけです。

 その分、週末は、子どもと過ごす時間をできるだけ優先したいと思っていました。実のところ週末にも会合や勉強会があったり、自分自身やりたいこともあったりしましたし、付き合いもありましたが、断った。ずいぶん不義理をしましたけれどもね。