先日、長時間・深夜労働が当たり前の、霞が関で働く女性キャリア官僚の有志が、仕事と子育ての両立に向けた提言をまとめて加藤内閣人事局長手渡した(「子育て女性官僚の100%が『両立に不安』」参照)。そこには、残業時間の短縮や在宅勤務の制度化が盛り込まれている。これが数年前の行動であれば、上司から「それは無理だ」と埋もれかねなったが、今は違う。先日閣議決定された「新・成長戦略」には、「女性の活躍推進」の項目に「テレワーク」が明記されている。(※在宅勤務は、「テレワーク」の分類における「雇用型」「在宅型」に属する。「テレワークって『残業代ゼロ』になるんですか?」参照)

 つまり、トップである安倍総理が推進している以上、組織に属している人は、彼女たちの行動に反対することはできないのだ。

週1日以上終日在宅勤務に挑戦する企業に助成金

 「うちの会社も在宅勤務ができるようになればいいのに」と少しでも思われるなら、今こそ、行動すべき時である。そして、訴えるべき相手は、社長だ。

 ただ残念なことに、多くの経営者は「在宅勤務」は福利厚生のひとつだと思っている。しかし、生産年齢人口が減っていくこれからの社会においては、在宅勤務は「企業戦略」だと私は考えている。人材流出の防止はもちろん、災害時の事業継続、コスト削減、さらには生産性向上と、さまざまなメリットを企業にもたらす。これを伝えることが必要だ。実はそのために、「在宅勤務が会社を救う」という、そのまんまタイトルの本も書いた。本には安倍晋三氏の推薦文ももらった。これを社長説得の武器にしてもらいたい。

 とはいえ、私も小さいながらも、会社経営者。直接の利益が見えないことに、コストをかけたくない。リスクをとりたくない。というのが本音。そこで、さらなる強力な武器をご紹介しよう。国の助成金だ。

 「この助成金を活用すれば最小限のコストとリスクで、在宅勤務を導入できます」と、話を持っていけば、門前払いはされないだろう。

図2 厚生労働省もテレワークに助成金を出している http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html
図2 厚生労働省もテレワークに助成金を出している http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html

厚生労働省 職場意識改善助成金(テレワークコース)

東京都も、在宅勤務導入に利用できる独自の助成金を用意している。

ワークライフバランス推進助成金

 これらの助成金は中小企業が対象だが、大企業は助成金ではなく「世の中の流れ」が武器になる。日経WOMAN2014年5月号「女性が活躍する会社ベスト100」の企業のうち、在宅勤務制度を導入しているのは32社(株式会社テレワークマネジメント調べ)。女性活用の声が高くなる中、来年のこの企画ではもっと大きな数字になるだろう。 国が本気で動き始めた今、大企業は「在宅勤務」の話を無視できないはずだ。

図3 日経WOMAN2014年5月号「女性が活躍する会社ベスト100」の企業のうち、在宅勤務制度を導入しているのは32社
図3 日経WOMAN2014年5月号「女性が活躍する会社ベスト100」の企業のうち、在宅勤務制度を導入しているのは32社