組織の長の意識が変われば、一気に浸透する

 金柿さんに続いてトップダウンの重要性を語ったのは、湯﨑広島県知事。企業や組織のトップが自ら早く帰る、意識を変えるといった取り組みは社内的にも対外的にも効果がある、と湯﨑知事は言う。

 「『いきいきパパの育休奨励金制度』を設けた2010年に子どもが生まれ、自ら育児休暇を取得することになりました。当時は社会的な波紋が広がりましたが、PR効果は十分にあったと思います。

 私が取得してから2009年では1.2%だった男性の育児休業取得率が急激に上がり、2012年度では7.2%に。夫の一日当たりの育児時間は2011年度の調査では、5年前の2006年度の約2.8倍となり、全国最下位から6位まで引き上げることができました

 とはいえ、金柿さんも湯﨑さんも、子どもが生まれるまでは「24時間企業戦士」だった。

24時間企業戦士がイクボスになるには「気づき」と「評価」が大事

 「“通常残業省”とも揶揄される(笑)通商産業省に僕がいたころ、夜中の2、3時まで働いて、翌朝は9時半に仕事がスタート、土曜日から海外出張して日曜日に帰宅し、月曜日から通常業務といった働き方をしていたんです。しかも、それをカッコイイと思っていた時期もある。そんな働き方を変えるには自分自身で気づくことが大事。そして、そんな新しい働き方を評価してくれるイクボスが必要だと思いますね」(湯﨑さん)。

 「私は、ワーク・ライフ・バランスの講演会で日本人の単位時間当たりの生産労働性が先進国の中で最下位だと知りました。もっと緩やかに働いて家庭を大事にしているイタリア人のほうが生産性はずっと高い。なんだ、結局、僕達が家庭を犠牲にしなくてはいけなかったのは、やり方が下手だったからなんだと気づき、発想の転換ができましたね」(金柿さん)

 さらに、「ママスタッフが組織に入ると、職場が変わるきっかけになる」とも。「ママスタッフには必ず子どものお迎えの時間がある。夜は無限に時間があると思って雑談してる男性に比べて仕事のスピードははるかに速い」と金柿さんが話すと、「そうだそうだ!」と会場が湧く場面も。