絵がうまいことはあまり大切じゃない

 授業が終わった後、ちひろ先生に話を聞いてみました――。この「がじゅく」に通うと、みんなあの年長さんのような作品が作れるのでしょうか。

 「あの子は、なかでも特別上手な子です。今日、アジサイを作るって聞くと、自分で実際に見に行ったそうです。絵のうまさだけでなく、大事なポイントを判別する眼もあるんでしょうね」

 確かに「がじゅく」の子は、美大出身の先生から教わるため〝上手〟になる子は多いそうです。しかし、ちひろ先生は、絵がうまいことはあまり大切じゃないと言います。

 「テクニック的なことも教えますけど、上手くなることが目的ではありません。絵に接していると心が豊かになるし、何よりアウトプットできることが子どもにとって大切だと思うんです

 確かに子どもの習い事といえば、インプットするものが多い気がします。詰め込むばかりの毎日じゃ、きっと子どもも疲れてしまう。そんななかいろんな課題を与えてもらってアウトプットする機会を得られることが、こういったお絵描き教室の大きなメリットなのでしょう。

 「ムスメさん。3歳なのに1時間半、ずっと集中してましてね。これって本当にスゴいですよ!」

 最後、ちひろ先生にこう褒められたのでニヤニヤしながら帰ると、先に帰宅して待っていたムスメがタタタと僕のところに駆け寄ってきて一言。

 「お絵描き教室、次はいつ行くの?」

 もう彼女は、「がじゅく」に入ったつもりでいるようです。

(文・写真/岡部敬史)