周囲に塾に通い出す子どもたちが増えてくると、気になるのが中学受験。本当にしたほうがいいのか、それとも地元の公立中学校に進学し、高校受験するほうがわが子には向いているのか…。長年にわたり小学生や教育者を取材してきた、日経キッズプラス『中学受験する? 公立に行く? わが子に合う進路の選び方』を担当した尾島和雄 日経BP生活情報グループ別冊編集長に聞きました。前回「塾反対だった父が息子と一緒に受験に向かった」に続き、今回は中学・高校での子どもの成長、私立中と公立中の違いなどがテーマです。

羽生祥子日経DUAL編集長(以下、羽生) 先日、日経DUAL読者のパパたちに子どもの中学受験についての意見を聞いたのですが、「大切なのは大学受験で、中学受験の結果などその子の人生にとっては誤差のようなもの。中学高校でどこに行ったって、結局、大学受験で頑張って学歴を残せるかどうかが大切だ」という人が多かったんですね。これはやっぱりパパに多い意見なんでしょうか?

尾島和雄日経BP生活情報グループ別冊編集長(以下、尾島) そう思いますよ。実際、企業って何だかんだ最終学歴しか見ないので、そういうふうにドライに考えることもできる。でも、例えば宇宙飛行士の若田さん。あの人は九州大学出身なんだけれど、宇宙に行って掲げたのは「尚文昌武」っていう(埼玉県立)浦和高校の旗なんですよ。あの人からしたら九大じゃなくて、浦和高校がオリジンなわけです。最終学歴ではなく、価値観は人それぞれまた違うのだと思います。

私立だろうが、公立だろうが、第一志望だろうが滑り止めだろうが、その学校でなんとかする(写真はイメージ。本文とは関係ありません)
私立だろうが、公立だろうが、第一志望だろうが滑り止めだろうが、その学校でなんとかする(写真はイメージ。本文とは関係ありません)

羽生 一方、東京で暮らすママたちの話を聞いていると、「私立中学校に積極的に行かせたいわけではないけれど、公立中学校に行かせるのはかわいそう」と考えている人が多いですね。言葉にすると偏見がひどいですが、「公立は私立に落ちた子がいく所」と考えているのがありありと伝わってきます。私は地方の公立中学出身なのでそういった意見に反発も覚えますが…。

尾島 学力面だけで言えば、都内の上位校ならば確実に私立のほうが高いですからね。けれども、「公立に行かせるのはかわいそう」という考え方は間違っていると思いますよ。

羽生 でもね、尾島さん。公立中学校に進学させることに不安を感じているママは多い。

尾島 「それは何の不安なんだよ!」と言いたいね。いい大学に入れない不安? それともいい会社に入れないこと? いいサラリーが得られない不安? 親が感じるその不安は、何の不安ですかって聞きたいよ。

羽生 ん~、親自身の罪悪感や義務感につながる不安かもしれません。私立に合格した子どもと同じような素質なのに、親が「手を抜いて」中学受験をしなかったことによって、わが子の才能が開花しない。あるいは才能をつぶしているのではないかという心配。

これから必要なのは想定外の事態に直面してもどうにかする力

尾島 私立に行ったら得するけれど、公立に行ったらうちの子は損するんじゃないか。そんな不安を感じたら、その損と得の基準って何だろうと、親自身が立ち止まって考えてみることが大事だと思います。

 つまり、「本当にいい会社ってどこやねん」って話ですよ(笑)。どれがいい会社だか、本当にあなたは分かるのかと。 働く環境も将来は絶対に変わる。もちろん「学歴」はどこかで物をいうところがあると思うので、それを全く考えなくていいという言い方はしないけれども。こっちだから損とか得とかという単純な問題じゃない。それぞれのルートにそれぞれの価値があるし、その人次第で得るものはいっぱいあると思うよ。