日本では、母親の就業率や、管理職の割合が大変低くなっていますが、スウェーデンは専業主婦がゼロ。皆さん、仕事をされています。実際に状況を見る前は、スウェーデンの奥さんはどれほど大変な思いをしているんだろうと思っていました。しかし、実際に見てみるとそうではありません。長時間働いている女性はいませんし、保育園そのものの質も高く、とにかくその環境が素晴らしい。だから、女性が働けているんだなあとよく分かりました。

 日本では、「あの子は保育園に預けられてかわいそう」と言われてしまいます。保育園の質も、あまりよいとは言えません。こうなると、女性の能力向上に限界があるのも当たり前。こういった部分で、きめこまかな対応についての議論が必要だと思います。

 出生率・出生数の目標設定については、タスクフォースのとりまとめ内容と同じく、私も慎重であるべきと考えています。目標値を出すことには、確かに一定の意味はありますが、出産を強制されているように感じられるのは問題です。

 人口の目標設定以上に重要なのは、少子化対策の理念を描くことだと思います。たとえ出生数の目標数値を定めたとしても、その数字が達成できたときにどんな社会になるのかがイメージできないようでは難しいと思います。イメージが共有できていない状態で数値だけ掲げても、当事者の共感は得られないでしょう。

 今の日本のように、人口減少の危機感をあおるようなやり方は、諸外国から見ると常識外れです。海外では「国としては増えてほしいが、当事者の共感が得られるかどうかが問題だ」と考えられています。つまり、人権への配慮がされているのです。

 誰でも結婚、出産ができる権利が保障されていて、すべての子ども達の人権が保障されている。こういった「当たり前のこと」を積み上げて、保障していくことが重要なのです。子どもや親がハッピーになれば、それを見て羨ましいと思った人が、出産を希望するはずです。こういうラインで少子化問題を解決するのが、本来あるべき姿だと思います。

(後編に続く)

(文/オフィスマイカ 井上真花 写真/勝山弘一)