だから、開成の入学式では合格して入学した子ども達には「入学おめでとう」、保護者の皆さんには「ご卒業おめでとうございます」という話をよくします。お母さんが子どもと非常に近い距離で時間を過ごしながら指導してきた時代は、入学と同時に終わりです。

 これから、子どもも思春期を迎えて、反抗期を迎えて、体が変わってくる。そんな時期には、男の子として自立できるような環境を用意しなければならない。特に中高一貫の男子校には、ヒゲを生やした低い声の高2、高3がいるわけです。そういう先輩と中1生も部活動や課外活動を通して接触します。そういう点において男の子を育てる上では、男子の中高一貫校というのは、子どもの役に立つのではないかと考えています。

梶取弘昌校長(武蔵中学校) 女子がいたらできない行事があります。中1で「山上学校」という、いわゆる林間学校ですね。中1の山歩きに教員は付き添うんですが、一番最後についています。命の危険がない限り、迷わせて歩かせる。それで30分で行くところが、1時間かかってもかまわないんです。

武蔵中学校の梶取弘昌校長
武蔵中学校の梶取弘昌校長

 中2で「海浜学校」というのをやっております。海では湾の外に出しますから、これはたぶん女子がいたら危険過ぎてできないなと思います。

 やはり、今の教育で欠けていることは、手を出し過ぎるということだと思います。本校に入学していただいたら、保護者会で話すのは「うちの学校はレールを外します」ということです。小学校の間はレールが敷きっぱなしですが、社会に出たら外されます。そこでは遅いんですよ。やはり早いうちに外してしまって、その中で色々な経験をさせる。それが大事なのかなと思います。

 それから、国外研修制度があるんですが、ドイツ、フランス、中国、韓国などにほぼ6週間~8週間、生徒を放り出します。教員は付き添わないです。それは本当は怖いんですよ。場合によって大きな事故になるかもしれない。私も覚悟を持って校長をしています。危険を考えればやめたほうがいい行事ですが、帰ってきた生徒は変わっているんです。