村上 プレイリーダーと呼ばれるスタッフは、子どもの成長と親子遊びについて学んだスタッフです。子どもたちの遊びが滞っているときや戸惑いがあるようなときには、遊具を使った遊び方の見本を見せるようなことはしますが、基本的には指導はしません。

 遊び方の見本を見せて、子どもたちが自分たちで遊び出したらプレイリーダーは自然と抜けて子どもたちの自主性に任せる方針です。主体は子どもと親ですから。

――キドキドには、他にも工夫があるのでしょうか。

村上 人間の基本的な動作というのは36種類に分類ができ、それをもとに複雑な動きを支えています。この基本的な動作が未発達だと、子どもの運動能力の低下につながるのですが、キドキドの遊びを通してこのうちのほとんどの動きを体験できます。私たちの調査ですが、キドキドでは子どもの基本動作の量や動きが、通常の2倍近く生み出されていることがわかりました。

壁にはロッククライミングの仕掛けがあったり、広いスペースにやわらかな巨大ブロックがあったりと、子どもたちが自然と自分から興味を持って体を動かす工夫があちこちにされている
壁にはロッククライミングの仕掛けがあったり、広いスペースにやわらかな巨大ブロックがあったりと、子どもたちが自然と自分から興味を持って体を動かす工夫があちこちにされている

――キドキドはショッピングモールなど大きな商業施設に入っている場合も多いですね。

村上 おかげさまで、集客の核となる店舗として商業施設から出店要請を頂くことも多いです。最近は「若者の百貨店離れ」という話もありますが、キドキドがあることで若い家族ユーザーを商業施設に呼び込めますし、キドキドを繰り返し利用することで、ユーザーがこうした商業施設のリピーターになってくれます。

――キドキドを利用した後、同じモール内でご飯を食べたり、買い物したりすることも多いですからね。

村上 そうなんです。祖父母も含めた3世代を集客できます。また利用者から「キドキドがあって助かった!」と言っていただくことも多く、商業施設の「子育てを応援してくれる場所」というイメージ作りにも役立ちます。

 それにキドキドは「世の中にこんな遊びがあるんだよ」という遊び環境を、広く一般に提案する場としても機能しています。私たちは保育園や病院などの企業・団体でも遊び環境をプロデュースしているのですが、キドキドは遊具の導入を考えているこうした人たちに対する、いわばショールームにもなっているのです。子どもがのめりこんで遊ぶリアルな姿が見られるわけですからね。

――今後の展開を教えてください。

村上 これまで東京・八王子市や大阪・堺市など、行政とコラボレーションした室内遊び場にも取り組んできましたが、より多くの子どもに遊びを保障するために、今後もこうした行政とのコラボを増やしたいと考えています。

 また昨年は初めて、公立小学校の校庭にも遊び場を作ることができました。これは私たちの悲願でした。この動きをさらに加速させたいと考えています。子どもを取り巻くあらゆる場所に豊かな遊び環境を創造し、もっと多くの子どもたちに日常的に遊んでもらえる機会を増やしたいですね。

(取材・構成/ライター 岩辺みどり)