「早くしなさい!」は大人の都合

 はじめに挙げた「大人の都合で子どもを動かそうとしている」時の典型的な言葉は、「早くしなさい!」でしょう。

 大事な会議が午前中にある朝に限って、子どもがグズグズ……。急いで保育園に送りたいのに、わざと靴を左右逆に履こうとするわが子に思わずプッツン。「どうして早くやらないの!」と朝から大声を上げてしまうなんてこと、ありませんか? あるいは、週末に買い物を手早く済ませたい時に限って、子どもがトイレの後の手洗いをいつもより入念にやって「いいから早く来なさい!」と引っ張ったり。子どもは“思い通りにいかない”ものですよね。

 でも、考えてみたら、「早く」というのは大人の都合であって、子どもにとってはどうでもいいこと。靴を左右逆に履くのは、単純に「いつもと違う履き方をしたら、どんな感じになるのかな?」という好奇心からの行動かもしれませんし、外出先で手洗いを丁寧にするのは「キレイに手を洗えるところをママに見てもらおう」と張り切っているのかもしれません。つまり、「早く」をジャマする子どもの行動は、見方を変えれば、“成長の証”かもしれないのです。

 そういうふうに考えると、頭ごなしに「早くしなさい!」と言うのではなく、もっと子どもの気持ちに寄り添った言い方ができそうですね。どうしても急いで困っている時には、急ぐ理由をきちんと伝えた方が子どもは理解してくれますよ。

 同じように、つい言ってしまいがちな「みっともないからやめなさい」という言葉も、子どもには理解しにくい“大人の都合“ではないでしょうか。

 ファミリーレストランなどに外食に行った時、子どもが大きな声ではしゃぎ始めると、周囲の目が気になって「みっともないからやめなさい!」と怒っているお母さんをよく見かけます。