自発的な遊びを引き出す「道具」を売る
――日本でも、おもちゃは子どものために作られている気がするのですが、両国の姿勢はどのように違うのでしょうか。
村上 確かに、おもちゃが子どものためを考えて作られているのはどちらの国とも同じです。でも、おもちゃを作る目線がどこにあるのか、その遊具からどんな遊びが生まれることを想定しているのかということは大きく違うと思います。
日本のものは、電動仕掛けのものやキャラクターのついたものが多く、本来の遊び方自体よりも目新しさで購入を誘引させる傾向が強いように思います。一方、私たちが世界中から選び抜いている商品は、「子どもが何を楽しいと思うのか」をメーンに考えられています。ボール1つにしても、ついてるキャラクターで買いたくなるのか、そのボールの動きが面白くて欲しくなるのかは、子どもの遊びの能動性が違いますよね。
だからボーネルンドでは、扱っている商品を「おもちゃ」とは呼びません。私たちは「遊び道具」と呼んでいます。自分で工夫してさまざまな使い方ができ、その道具を使ってさらに遊びが広がっていくものだと考えています。
子どもたちに遊びは不可欠なものですが、私たちは「遊びは自発的なもの」だと定義しています。子どもがやってみたい、触ってみたい、登りたいなど能動的に思って活動することから広がっていく。遊び方が決まっていなくても、自分で創り出して工夫して遊んでいけるような、子どもが主役となる遊び道具を日本の子どもたちに使ってほしい、そして健やかで自立した大人に育ってほしいのです。
「バケツ1個800円」で大失敗。直営店を出したのが転機に
――ですが創業してから数年間は、事業がうまくいかなかったそうですね。